内定前、内定後のバックグラウンドチェックについて!詳しく解説
企業の採用活動では、バックグラウンドチェックを実施するケースがあります。
その場合、どのタイミングで行うことが最適なのでしょうか?
ここでは、バックグラウンドチェック実施の時期と、バックグラウンドチェックの結果から内定を取り消す場合の注意点について解説いたします。
バックグラウンドチェックのタイミング
一般的な採用活動の際、以下のような目的でバックグラウンドチェックを行います。
【採用リスクを減らす】
バックグランドチェックを行うことで、会社に不利益を与える可能性のある人物の採用を未然に防ぐことができます。
例えば、過去に犯罪や大きなトラブルを起こしたことがないかを採用前に確認することで、業務上の損害や社内の混乱が発生することを防ぎます。
【公平な採用を行う】
採用候補者が自分で記入する履歴書などの選考書類は、経歴詐称や虚偽も可能です。
また面接では、自分に不都合なことは言わずにおくこともできます。一部の候補者による詐称や虚偽、隠蔽などによって採用の公平性が失われることを防止します。
バックグラウンドチェックとリスク回避
採用企業は、虚偽の経歴や査証を行う候補者を事前に調査することで、会社に不利益をもたらす人材の採用を防ぐことができます。
会社にとってのマイナス要素を早期に発見できることも、バックグラウンドチェックを行う目的の一つです。
アメリカをはじめとした海外の企業では、バックグラウンドチェックは珍しいことではありません。
日本でもコロナ禍などの影響で、1人あたりの転職回数が増え、雇用形態が多様化しています。
そのため、バックグラウンドチェックを行う日本企業も増えています。
採用後の教育を経て、育てた社員が期待していたほどのパフォーマンスが発揮できなかった。
経歴詐称や過去のトラブルが元で、企業に損失を与える。
このような理由から、以前は役職などの転職者に実施していたバックグラウンドチェックですが、最近では一般職やアルバイト採用でも失敗のリスク排除のため、実施件数は増えてきています。
バックグラウンドチェックのタイミング
バックグラウンドチェックを実施する際、基本的には調査会社に依頼するため費用が掛かります。
そのため、選考の早い段階で行うことは費用がかさみます。
また、候補者の志望度が高くなければ、選考辞退のリスクもあります。
しかし、内定後や入社後のバックグラウンドチェック実施では、労働契約が成立しているため、もし調査で問題が発覚しても解雇にすることは難しくなります。
入社後の解雇通知はハードルが高く、解雇することが合理的で客観的かつ社会通念上、妥当と認められる場合に限られます。そのため、基本的には認められないことが多いです。
このようなタイミングで、バックグラウンドチェックを行うこと自体は可能ですが、問題があったときの対応が難しくなるため、内定前に行うのが最適といえます。
バックグラウンドチェックの内容
バックグラウンドチェックを実施する際は、個人情報保護法の観点から、必ず採用候補者からの同意が必要となります。そして、原則、採用企業の目的に合った項目だけを調査します。
【個人情報の保護に関する法律】
(利用目的の特定)
第十七条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。
(第三者提供の制限)
第二十七条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
企業の目的により調査範囲は異なりますが、バックグラウンドチェックで調査される項目は下記の通りです。
・学歴
・職歴
・勤務態度
・犯罪歴
・民事訴訟歴
・自己破産歴
・反社会的勢力との繋がり
・SNS等インターネットメディア
・友人・前職の上司、同僚への聞き取り
バックグラウンドチェック後の内定取り消し
「内定」は、労働契約の一つです。
既に採用が決定しており、就業を開始日も決定しています。
そのため、内定を会社側から一方的に取り消すことは、労働契約の「解雇」にあたります。
適切な理由がない解雇は、解雇権の濫用に該当します。
内定取り消しに関する法律
一度、内定を出した採用候補者の場合、それを取り消すことは法律の観点から非常に難しいといえます。
【個人情報保護法】
バックグラウンドチェック実施の上で、その実施に関する法律として「個人情報保護法」は抑えておく必要があります。
バックグラウンドチェックで得られる個人情報は、個人情報保護法の「個人データ」に該当します。
そのため、個人情報保護法の適用を受けます。
個人データを取得する際は、原則として本人の同意が必要です。
そのため、バックグラウンドチェックを実施する際は、必ず採用候補者本人の同意を得てから行わなくてはなりません。
もし、同意を得ずにバックグラウンドチェックを実施し、その調査結果から内定を取り消せば違法行為となります。
【労働契約法】
内定は、「就労始期付解約権留保付労働契約」が締結されているとの考えが確立されています。
「始期付」とは、就労の義務が始期より発生すること。
「解約権留保付」とは、内定通知書や誓約書に記載された内定取消事由により、労働契約を解約できることです。そのため、内定を取り消すことは、解雇扱いになります。
解雇の場合、客観的・合理的、かつ社会通念上相当であると認められない限り、解雇はできません。
基本的には、バックグラウンドチェックから得られた情報だけを理由に解雇はできないということです。
内定後の取り消し事由
内定取り消しが有効となるためには、客観的で合理的な理由が必要です。
具体的な事由として、以下のようなケースが有効となり得ます。
【虚偽の申告があった場合】
経歴詐称等で内定者の申告に虚偽があったことが判明し、その内容が重大で内定者として不適格な場合に、内定取り消しが認められる可能性があります。
【刑罰法規に違反した場合】
採用内定後に、内定者が傷害事件等の重大な犯罪行為で逮捕された場合には、内定取り消しもやむを得ないと判断されるケースがあります。
【疾病などで働けなくなった場合】
著しく内定者の健康状態が悪化し、業務に耐えられないと思われる場合には、適切な労務提供が期待できなくなるため、内定取り消しが可能と考えられます。
【大学等を卒業できなかった場合】
大学等の卒業を条件に採用内定を出しているケースでは、その内定者が卒業できなかった場合は、採用の条件を満たさないため、内定取り消しが認められます。
内定前の取り消し
一方、「内々定」は採用予定の通知です。
内々定を行ったとしても、法律上は内定と異なり、労働契約は成立していません。
そのため、内々定を会社側から取り消した場合は、基本的には違法とされません。
ただし、内定をもらえるという合理的な期待を有しているにもかかわらず、この期待を裏切ったとして、不法行為が成立した判例もあります。そのようなケースでは、会社に損害賠償が発生する可能性があります。
まとめ 【バックグラウンドチェックは、内定前に行う。】
内定後のバックグラウンドチェック実施は、調査結果で経歴の詐称等の問題が発覚したとしても、内定を取り消しの手続きが容易ではありません。
また、転職者が自社の内定によって現職中の会社を退職すれば、内定を取り消す事は、転職者を無職にしてしまうことになります。
バックグラウンドチェックの実施は、双方のためにも内定前に行うことが良策です。
投稿者プロフィール
- 10年以上にわたる探偵経験を持ち、調査分野のエキスパートとして認められている。これまでに手掛けた調査案件は年間200件以上にのぼり、その確かな調査力と洞察力で数多くの難解なケースを解決してきた実績を持つ。特に浮気調査や素行調査の分野で高い成功率を誇り、信頼と実績に基づいた調査を提供することを信条とし、クライアントからの高い満足度を誇る。
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