バックグラウンドチェックのやり方とは?そのやり方を詳しく解説します
バックグラウンドチェック、一般的にはあまり聞き慣れない言葉かもしれません。
しかし、企業採用者にとって一度は聞いた事がある言葉では無いでしょうか。
採用候補者の全体像を把握するために行われる調査、これがバックグラウンドチェックと呼ばれる物です。企業の中では、採用候補者の素性を知るために実施しているケースもありますし、実施を検討している企業もあるのではないかと思います。
バックグラウンドチェックと言っても、やり方は様々あります。
今回は、バックグラウンドチェックのやり方について解説していきたいと思います。
バックグラウンドチェックについて
バックグラウンドチェックとは、採用候補者の経歴詐称、学歴詐称、金銭トラブル、反社勢力との繋がりが無いか等のチェックをする物です。こうする事で、採用後のトラブルを未然に防ぐ事が出来ます。採用者自身に問題が無いか確認する事もありますし、採用後のパフォーマンスに問題が無いかと言った点も確認する事が出来ます。
バックグラウンドチェックと言うと、何となく個人情報の観点から嫌悪感を抱く人も多いのでは無いかと思いますが、欧米では95%の企業で何らかのバックグラウンドチェックを行っているとされています。
実際、アクセンチュア、マイクロソフトなど外資系企業ではバックグラウンドチェックを行う旨が明記されています。
参照:アクセンチュア人材募集・採用プライバシー・ステートメント
一方で、日本企業に関しては、バックグラウンドチェックを行う企業は少ないと言われていますが、実態は良く分からない、というのが現状です。
一口にバックグラウンドチェックと言っても、そのやり方にはいくつか方法があります。
バックグラウンドチェックとリファレンスチェックの違いとは?
バックグラウンドチェックとリファレンスチェックは、採用時に候補者の過去を確認するために行われる調査ですが、それぞれの目的と内容には違いがあります。
バックグラウンドチェックは主に候補者の経歴、素行、反社会的勢力との関係など、法的リスクを含めた総合的な確認が主な目的です。
一方、リファレンスチェックは候補者の過去の勤務実績や上司・同僚の評価を確認するもので、仕事に対するスキルや態度に関するフィードバックを収集することが主な目的です。
バックグラウンドチェックのやり方
まず、バックグラウンドチェックを行う上での前提となるのが、本人の同意を得る事です。
調査内容が個人情報となるため、個人情報保護法 第二十七条(第三者提供の制限)の観点から、事前に採用候補者本人の同意が必要となります。
加えて、要配慮個人情報(個人情報保護法 第二十条(適正な取得))の点からも、第二項に定める除外要件を除いて、原則、本人の同意を得なければ取得する事が出来ません。
要配慮個人情報となるのは、個人情報保護法 第二条三項にて「本人の人種」「信条」「社会的身分」「病歴」「犯罪の経歴」「犯罪により害を被った事実」など差別に繋がる事項の他、不当な差別偏見、その他不利益が生じないように特に配慮を要する個人情報とされています。
本人の同意無くしてバックグラウンドチェックを行う事は違法行為となりますので、この点は注意が必要です。いずれにしても、住民票、戸籍、思想信条、犯罪歴は容易に収集出来る物では無いのです。
1バックグラウンドチェックのやり方その1 自社で実施
1つめのやり方として、企業自身が採用候補者の情報を収集するやり方があります。
この場合、以下の情報を取得する事が出来ます。
・学歴
・職歴
やり方としては、
・卒業証明書の取得
・職歴書取得
・ヒアリング調査
などが挙げられます。
卒業証明書は在籍していた学校へ直接取得依頼をする事になります。
職歴書であれば、現職企業から職歴、雇用形態、在籍期間などが記載された職歴書を入手する事になります。場合によっては、実際に在籍会社への問い合わせを行います。
メリットとしては、自前の調査のため調査費用がかからないという点があります。
一方で、デメリットとしては、調査出来る内容に制限がある点、各種書類を取得、問い合わせを行うための工数がかかるといった点を挙げる事が出来ます。
2バックグラウンドチェックのやり方その2 調査会社を利用
2つめのやり方として、調査会社に依頼するという方法があります。
この場合には、以下の情報を取得する事が出来ます。
・学歴
・職歴
・金銭トラブル
・反社勢力との関係
・素行
調査会社は依頼に基づき調査を行います。
調査会社によっても異なってきますが、やり方としては、
・調査会社のデータベース調査
・行動調査(尾行、張り込み)
・ヒアリング調査
・公開情報調査(インターネット、官報などの公にされた情報の調査)
など様々です。
具体的には、学歴であれば卒業証明書の取得、在籍時の学校への確認、職歴に関しては前上司、上司、同僚へのヒアリングを行います。
破産歴に関しては官報に記載があるため、公開情報に基づき調査を行います。
反社チェック関しては、調査会社独自のデータベースに基づき調査する事が多いようです。
その他、SNSによる採用候補者の発信情報等も調査対象に含まれます。
調査会社に依頼すれば、自社でチェックするよりも幅の広い情報を取得する事が出来ます。依頼する事で、自社で行う諸手続等の工数削減が出来る点もメリットであると言えます。
一方、デメリットとしては、調査費用がかかる点、依頼先の調査会社によっては違法な方法で情報取得を行い、結果としてその法的責任を負わなければならないという点が挙げられます。ただし、法的責任に関しては、問い合わせをした(調査した)側ではなく、情報を提供した側に責任が発生するという解釈もあり、難しい所です。
いずれにしろ、法的な責任により会社そのものが公的機関の捜査対象となったり、法律的な観点から司法の場に晒される事になるため、調査に関しては慎重に行う必要があります。
バックグラウンドチェックの実施におけるリスクとその対策
バックグラウンドチェックを行う際のリスクには、法的リスクと候補者との信頼関係のリスクが含まれます。たとえば、適切な同意なしに個人情報を収集することは違法とされ、企業イメージに影響を及ぼす可能性もあります。
また、候補者がこのプロセスに不信感を抱くと、入社後のモチベーションにも影響が出るかもしれません。リスクを回避するためには、事前に候補者の同意を得る、調査内容を透明性のある形で伝える、信頼できる調査会社を選ぶといった対策が必要です。
企業がバックグラウンドチェックを導入するメリット
バックグラウンドチェックを導入することで、企業にはいくつかのメリットがあります。まず、採用後に発生しうるリスクを事前に把握することで、安心して業務に携わってもらえる点です。
また、社員の信頼性を保証することで、社内外の信頼度が向上し、企業全体の健全性を保つことにもつながります。重要なポジションや職責のある役職では、特にこうしたチェックを行うことで安心して業務を任せられるようになります。
バックグラウンドチェックを進める前の“事前準備”のポイント
バックグラウンドチェックを実際に進めるうえで、企業側にとって事前に確認しておくべきポイントは意外と多いものです。ここでは、その「準備段階」で注意すべき点をご紹介します。これらを理解しておくと、調査の流れがスムーズになるだけでなく、候補者とのトラブル回避にも役立ちます。
調査項目の優先度を決める
バックグラウンドチェックでは、調査したい項目が多くなればなるほど、時間や費用がかかる傾向にあります。そのため、事前に「なぜこの調査が必要なのか」「何をどこまで確認すべきか」を社内で話し合い、優先度を明確にしておきましょう。
- 例: 学歴・職歴の確認は必須項目とし、反社会勢力との関係チェックは要件によって実施するなど、調査範囲をあらかじめ区別しておく
候補者へ調査実施の旨を説明・同意を得る
候補者に対しては「バックグラウンドチェックを実施する理由」「どのような項目を調査するのか」を事前に説明し、同意を得る必要があります。個人情報保護の観点から、本人の同意なしでの調査は違法となる可能性が高いため、注意が必要です。
- 例: 「最終選考に進んだ方には○○の項目について調査を実施しますが、同意書への署名をお願いする形となります」など、候補者が納得しやすい段取りを用意する
社内担当者を決めて情報の一元管理を行う
バックグラウンドチェックの結果をどう扱うかも重要なポイントです。特に複数の部署や担当者が関わる場合、情報が分散してしまうと管理が曖昧になりがちです。そこで、
- 調査に関する情報を集約・管理する「社内担当者」をあらかじめ選任
- 外部調査会社とのやりとりもその担当者を中心に進める
といった体制を整えておくと、情報漏洩や意思疎通のミスを防げます。
コンプライアンスと社内規定を再確認する
バックグラウンドチェックは、あくまで採用活動の一環として「企業の安全や信用を確保する」ために行われるものです。しかし、その方法を誤ると個人情報保護法やプライバシーの侵害に該当する恐れがあります。
- 社内のコンプライアンス部門や顧問弁護士などと相談のうえ、違法な調査にならないように留意
- 調査会社にも「合法的な方法」で調査する旨を明確に要求し、契約内容を確認する
成果物の活用計画を立てる
バックグラウンドチェックの結果、どのような判断材料とするか、またその結果をどのように保存・共有するかも事前に決めておきましょう。
- 例: 「調査報告は内定の最終判断にのみ利用し、採用決定後には一定期間で廃棄する」などのルールを社内規定に盛り込む
まとめ
現在、バックグラウンドチェックを行う企業が存在する事はたしかで、そのやり方もいくつかある事が分かりました。バックグラウンドチェックを行う上では、その目的、リスクをどこまで受容出来るか考慮する必要があります。単に採用候補者の仕事のパフォーマンス、勤務状況を確認するだけであればリファレンスチェックを行うという方法もあります。
バックグラウンドチェックそのものの是非は置いておくとして、採用される側からすれば決して気持ちの良い物ではありません。就職、転職先候補からその企業を外す人も出てくるでしょう。
いずれのケースにおいても、現在在籍している企業に転職する事が知られてしまうため、実施に関しては慎重に検討する必要があります。
時には法的問題に発展する可能性もある事から、調査会社に関しても慎重に選ぶ必要があります。調査会社に依頼するのであれば、調査前の事前打ち合わせで調査内容、調査方法、不明点などを明確にし、後からトラブルとならないようにしましょう。
あえてバックグラウンドチェックまで踏み込むのか、リファレンスチェックに留めるのか、はたまた、そもそも実施をしないのか、慎重に検討するよう考慮する事が求められています。
投稿者プロフィール
- 10年以上にわたる探偵経験を持ち、調査分野のエキスパートとして認められている。これまでに手掛けた調査案件は年間200件以上にのぼり、その確かな調査力と洞察力で数多くの難解なケースを解決してきた実績を持つ。特に浮気調査や素行調査の分野で高い成功率を誇り、信頼と実績に基づいた調査を提供することを信条とし、クライアントからの高い満足度を誇る。
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