バックグラウンドチェックの適切な実施タイミングとは?詳しく解説します

外資系企業、金融系企業を中心に実施されていると言われるバックグラウンドチェック、調査内容もそうなのですが、気になるのはいつ実施すべきか、という点です。
既にバックグラウンドチェックを採用プロセスに取り入れている企業を除き、未だ導入していない企業からすれば、採用候補者の合否判定を出す兼ね合いから、いつ実施すべきか悩む所です。書類審査時点、もしくは1次面接前のバックグラウンドチェックは時期尚早となってしまいますし、逆に採用直前でのバックグラウンドチェックでは遅過ぎてしまいます。
そこで、今回はバックグラウンドチェックをいつ行うべきか、そのタイミングについて考えていきたいと思います。
バックグラウンドチェックのタイミング

採用をする上で、バックグラウンドチェックはいつ行ったら良いのでしょうか。
実施するタイミングは大きく二つに分ける事が出来ます。
一つ目は内定を出す前に実施するケース、二つ目は内定を出した後で実施するケースです。
どちらを選択するかは企業によって異なりますが、ほとんどの企業は内定前にバックグラウンドチェックを
行っているようです。
それぞれ、詳細について解説していきたいと思います。
バックグラウンドチェック実施タイミングその1 内定前に実施
一つ目のタイミングである内定前の実施ですが、1次面接から2次面接を行う間に行われる事が多いようです。
理由は、書類選考から1次面接までの期間では時期が早過ぎてしまうからです。書類選考、1次面接時点でバックグラウンドを行った場合、採用候補者の人数分チェックを行わなければならないため、相当な労力を要する事になってしまいます。調査会社への調査費も莫大な額となるでしょう。
採用者候補者自身の志望度が低ければ先行辞退する可能性もあり、調査にかけた費用、労力が無駄になる可能性もあります。そのため、早期のバックグラウンドチェックはコスト、労力共にメリットが無いのです。
逆に、時期が遅くなれば採用そのものに影響を与えてしまいます。
2次面接後では内定を出すか出さないか判断する瀬戸際となってしまいます。場合によっては採用に向けた事前準備期間と重なってしまう事も考えられます。
内々定であれば、まだ内定取り消しはし易いかもしれませんが、昨今の状況を鑑みても、こうした企業の行動は社会的に問題視され、企業そのものが世間の目に晒される事態になりかねません。採用候補者にとっても、在籍会社を退職する手続きに入っている可能性が高く、非常にリスクが大きいと言えます。
このようにして考えていくと、選考過程である1次面接から2次面接の間でバックグラウンドチェックを行うのが一番無難であると言えます。
バックグラウンドチェック実施タイミングその2 内定後に実施
二つ目のタイミングである内定後の実施ですが、内定後、もしくは入社後に行われます。
既に採用が決定しているため、期間的な制約は受けにくく、採用者が特定されている観点からしても調査がし易く、調査費用も限定されます。
しかし、内定後にバックグラウンドチェックを行う方が難易度は格段に高くなります。
なぜなら、基本的には内定を出した時点で、雇用契約が成立したものとみなされるからです。
この点については実際に判例があり、昭和52年の最高裁判所判決では「求職者の応募は労働契約の申し込みであり、企業の採用内定通知は申込に対する承諾とみなされ、労働契約が成立する」旨判決が出ています。
従いまして、内定取り消しというのは採用者を解雇する事と同等となり、正当な理由が必要となります。特に日本においては解雇に対する見方が非常に厳しく、余程の正当な理由無しに解雇する事は出来ません。解雇する事が「合理的で客観的かつ社会通念上、妥当と認められない場合は無効」とあるため、基本的には認められないと考えておく方が妥当です。
ただし、重大な経歴詐称があった場合など解雇が出来るとした判例もあり、必ずしも不可能というわけではありません。
例えば、採用時には「業務内容について職歴があり資格を有している」とした後に、実は全く職歴が無く資格も有していなかったと、本人が認識した上で虚偽申告している事が判明した場合には、解雇事由にあたる事もあり得ます。
参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構 【服務規律・懲戒制度等】経歴詐称
しかし、前述した通り、基本的には入社後に解雇をするにはハードルは高いと考えた方が良いでしょう。
企業側からすると、本来採用すべきで無かった人物を採用してしまう事にも繋がりかねない一方で、内定取り消しも出来ない状況となってしまい、リスクが高くなってしまうのです。
バックグラウンドチェックに要する時間

ここまで、バックグラウンドチェックを行うタイミングについて解説してきましたが、タイミングを計る上で重要な
要素があります。
それは、調査にどのぐらいの期間を要するのか、という点です。
通常調査会社であれば、早ければ2日以内、遅くとも1週間程度で結果が出るとされています。
自社で行う場合、簡易的なものであれば数日で完了するものの、ほとんど有益な情報は得られないと考えた方が良いでしょう。そのため、実際には2~3週間程度は要すると考える事が出来ます。
なぜ所用時間が重要な要素となるかと言えば、面接、もしくは採用可否を判断する上でのクリティカルパスとなってしまうからです。仮にバックグラウンドチェックを適切なタイミングで行う事が出来れば、採用可否の結論も適切な時期に出す事が出来ます。
一方、調査に時間を要すれば、それだけ判断に時間を要する事になります。採用候補者が辞退してしまう可能性も出てきます。そのため、採用スケジュールにおいては面接実施タイミングとバックグラウンドチェックのタイミングを上手くリンクさせる事が重要となってきます。
まとめ
基本的には、バックグラウンドチェックのタイミングは、1次面接から2次面接に至る間に行うのが妥当だと思われます。
内定前であれば、選考過程の一環と捉える事が出来ます。しかしながら、余りに早期に実施してしまうと、負担が大きくなり、余りに遅くなりすぎるとリスクが高くなってしまいます。そのため、上記タイミングが適切であると言えます。ましてや、内定後のバックグラウンドチェックを行うとなると、かなりハードルが高くなり余程の事が無い限り解雇出来ないと考えた方が良いでしょう。
適切なタイミングでバックグラウンドチェックを行うためには、調査期間がどの程度かかるのかを把握した上で、選考プロセスに組み入れる必要があります。
バックグラウンドチェックの実施を検討している企業においては、これら事項を慎重に検討した上で、実施する事が重要であると言えます。