リファレンスチェックを勝手にやるのは違法!本人の同意を取り付けること

履歴書や職務経歴書、面接だけでなくより深い情報収集するためにリファレンスチェックを行う企業も日本では増えています。中には当人の許可なくリファレンスチェックを行いたいと思っている企業もあるでしょうが、結論から言うとおすすめできません。
勝手にリファレンスチェックをするデメリット

本人の同意なく勝手にリファレンスチェックをした場合、リスクやデメリットがあります。リファレンスチェックでは個人情報をいろいろと取り扱う必要が出てくるからです。
個人情報保護法に引っかかる恐れ
リファレンスチェックでは候補者の個人情報を取り扱う形になります。ですから個人情報保護法に基づいて調査を行わないといけません。例えば中途採用者の調査を行う場合、前の企業から情報提供を受けることもあるでしょう。この情報は法律的には個人データに分類されます。企業は候補者当人の同意なく個人データを第三者に提供することはできません。
さらに採用側が個人情報を受ける場合には、そのいきさつに関する記録をつけなければなりません。情報の取得経緯について記録していないと違法行為に該当する可能性があります。このように当事者の許可なく勝手に調査を行うと法律に引っかかる恐れがありますので注意してください。
風評被害を被る可能性も
インターネットが広く普及しているこの情報社会では、何か不祥事があると一気に広まる危険性があります。もし勝手にリファレンスチェックを行ったことが発覚すれば、「あそこは法律違反して候補者の情報を勝手に集める会社だ」という風評が広まるかもしれません。そうなれば、会社の信用問題にかかわる可能性が出てきます。
求人情報を出しても応募がなかなか集まらないことも出てくるでしょう。さらにコンプライアンスのできない企業というレッテルが貼られれば、得意先が取引を打ち切る、規模を縮小するということもあるかもしれません。その結果、会社の経営が厳しくなることも考えられます。このように勝手にリファレンスチェックをすることで、会社の存亡にかかわる危機をもたらすこともあり得ます。
違法行為にならないために企業が心がけるべきこと

リファレンスチェックは本人の同意なしに勝手に行うと違法です。しかしチェックそのものに関しては違法性はありません。では違法行為にならないために、社内でどのような対策を講じればいいかについてくわしく見ていきます。
個人情報保護法に基づく取り扱いの徹底
個人情報保護法が施行されてから、個人情報の取り扱いは慎重を期す必要があります。個人情報保護法では、いろいろなルールが制定されています。まず個人情報は利用目的の範囲内で取り扱わないといけません。またデータに関するセキュリティの徹底も求められます。データに関して提供した当事者から事実と異なるというクレームがあった場合、求めに応じて訂正や削除をしなければなりません。当人から開示請求があった場合には、速やかに情報開示を進めることも義務付けられています。このような個人情報保護法を遵守した取り扱いを社内で共有しましょう。会社では法律順守しているつもりでも、一部の社員が逸脱行為をする場合もありうるからです。
求職者の同意を得る
求職者の同意を得たうえでリファレンスチェックをやる分には問題ありません。そこでまずリファレンスチェックを行う旨を求職者に説明し、同意を取り付けましょう。しかし中には「個人情報をむやみに提供するのは…」と躊躇したり、拒否したりする人も出てくるかもしれません。その場合には求職者の説得を行いましょう。そこで効果的な方法は、ポジティブな面を伝えるように努めることです。
リファレンスチェックを嫌がるのは、自分の身の回りのことをあれこれ調べられるというネガティブな印象があるからです。しかし調査を行うことは、求職者自身にとってもメリットがあります。例えば求職者の人間性や特性を知ることによって、企業風土にマッチするか把握できます。その結果、雇用のミスマッチを防止できます。企業にとっても求職者にとってもメリットがあります。求職者にとっても雇用のミスマッチがあると「こんなはずでは…」ということになり、すぐに離職する羽目につながりかねません。それを防止できるのは求職者にとってはポジティブなことです。
求職者の人となりやこれまでのキャリアを詳しく知ることで、企業としてもその人の働きやすい環境を提供できるのもメリットです。このようなポジティブな側面をしっかり伝えれば、リファレンスチェックを渋っていた人も同意してくれるかもしれません。ただしいろいろと説得しても相手が首を縦に振ってくれなければ、リファレンスチェックは行わないでください。
タイミングはいつがベスト
リファレンスチェックを行うタイミングは企業によって若干差があるようです。しかし内定を出す前で行っているところが多いです。内定を出す前に多角的に候補者をチェックして、本当に採用してもいいのか最終的な判断材料にするわけです。内定を出した後にやって、「やっぱり弊社には合わない」ということで内定取り消しを出すのは問題もあります。内定取り消しは合理的理由がないと、解雇権濫用と見られる恐れがあるからです。内定を出す前であれば、まだ雇用契約は何も交わしていない状態と解釈されます。よって解雇権の乱用にも該当しません。
まとめ
リファレンスチェックはここで何度も紹介したように、本人の許可なく勝手に行うことは禁じられています。個人情報保護法に抵触する恐れがあるからです。ですから必ず調査をする前に求職者に説明して、同意を取り付けることは社内で共有の徹底を進めましょう。もし本人にあずかり知らぬところで勝手に調査していることが露見すれば、法律違反を行う企業と見られ、深刻な影響が出かねません。
リファレンスチェックには雇用のミスマッチを防ぐ、候補者の能力が最大限発揮できるような環境づくりの参考になるなど候補者にとってもメリットのある調査です。ポジティブな側面もしっかり説明したうえで、同意を取り付けられるように努めてください。