ipoに関わる企業にとっての反社チェックの重要性とは?対策方法も解説

2007年6月19日、政府より「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を発表しました。以降、反社会的勢力を社会から排除することや、反社会的勢力による被害を生み出さないことを目的として、より強固な取り組みが行われています。企業が行う取り組みのひとつとしてあげられるのが、反社チェックです。本記事では、新規上場株式(ipo)における反社チェックの重要性や、対策を解説します。
そもそも反社チェックとは何か

「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」の発表後、2011年にはすべての都道府県で「暴力団排除条例」が施行されました。企業は、「暴力団排除条例」「暴力団排除条項」によっていくつかの努力義務が課されており、そのひとつが反社チェックと呼ばれる対応です。
反社チェックとは、企業が他社と契約や取引を行う前に、取引先・社員・株主に反社会的勢力に関わる人物がいないかどうかをチェックするものをいいます。「暴力団排除条例」のためにも、事前の反社チェックは推奨されてはいるもの、具体的なチェック方法は定められていません。従って、各企業にて反社チェックの方法や実施タイミングが委ねられているといえます。
反社チェックを行う目的
反社チェックの目的は、反社であることを把握することで関係を断つことです。企業からの関係を立たれた反社は資金を調達できず、結果的に反社の根絶につなげることができます。同時に、企業は反社との関係を断つことで、反社からの不当な要求や恐喝などの被害を受けずに済むのです。
ipoを目指している企業にとって反社チェックが必要な理由

新規上場株式(ipo)を目指している企業にとって、反社チェックは必須事項だといわれています。理由としては、政府が発表した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を受け、東証(東京証券取引所)や大証(大阪取引所)も同様の声明を発表したためです。
この声明は「反社会的勢力排除に向けた上場制度及びその他上場制度の整備について」といます。以降、上場申請会社は、企業側が反社会的勢力排除に対して適切な対応をとっているかどうかを審査することとなったのです。
上場申請会社の審査によって反社との関わりが発覚した場合、次のようなリスクが発生します。
上場契約違反による上場廃止
新規上場株式(ipo)では、反社との関わりはないと公表したうえで申請する必要があります。従って、公表後に反社との関わりがあることが判明した場合、契約違反とみなされ、上場廃止処分が下されるのです。実際に、反社からの資金を受けていた企業が上場廃止となった事例もあります。
たとえ、企業側が知らなかったとしても、すでに上場している企業であったとしても、反社との関係が判明した際は、上場廃止処分が下される可能性は高いため、十分注意が必要です。
社会的信用の損失と経済的損失
反社との関わりの有無は、社会的信用問題に直結します。たとえ疑惑であっても、大きなダメージとなりうるセンシティブな事柄です。また、コンプライアンス違反として社会的制裁を受けることも免れません。
さらに、取引先や顧客としては、反社と関わりのある企業との取引は自身も反社と関わってしまうリスクを伴うものとなります。従って、反社と関わりのある企業との取引を避けるといえるでしょう。結果的に、反社との関わりが疑われた企業は取引先を失うこととなり、大きな損失を受けてしまうのです。
上場申請時にipoが反社チェックする審査対象とは

ipo上場申請時、反社会的勢力との関係がないことを示す確認書の提出が求められます。確認書の内容は審査対象となりうるため、過去に反社チェックを行い問題がなかったとしても、提出前に再度確認するとよいでしょう。
企業役員
提出する確認書では、役員の氏名・生年月日・直近5年間の経歴・直近5年間で関わった団体の記載が求められます。このとき、役員本人だけでなく役員の親族などもチェックするのがおすすめです。親族や関係した団体までチェックすることで、企業役員のなかに反社と関わりをもつ者がいないという、より確かな確認書になるといえます。
株主
確認書で求められるのは、上位10名の株主の情報です。法人株主であれば名称と本店所在地、個人株主であれば氏名・生年月日・住所を記載します。法人株主であれば、代表者だけでなく少なくとも役員は必ず反社チェックするようにしましょう。
また、反社のなかには、株主総会の進行などを妨げる者や、不正に株式を操作しようとする者がいるといわれています。従って、企業の運営という観点においても、株主の反社チェックは行うべきです。
取引先
主要な取引先の上位10社を提出します。取引先の名称・本店所在地の記載が必要です。すべての取引先の反社チェックは難しい場合もありますが、少なくても提出した取引先は定期的・継続的なチェックを行うことをおすすめします。このとき、顧問弁護士や顧問税理士などの外部機関との関係も確認するようにしましょう。
従業員
確認書において、従業員の記載は求められていません。とはいえ、ipo企業にとって、反社との関わりをもつ従業員の存在は大きなリスクを伴います。確認書の記載は不要であったとしても、自身の従業員の反社チェックは必ず行うようにしましょう。
ipo企業が行うべき反社チェックの方法

ipoを目指している企業だけでなく、ipo企業にとっても反社チェックは重要な事柄です。しかし現代において、反社会的勢力であるかを簡単に照会できるシステムは存在していません。言い換えれば、反社チェックの方法や実施タイミングはすべて企業に委ねられているといえるのです。
次の3つは代表的な反社チェックの方法です。適切な方法を選択して、反社と関わりの根絶と継続を目指しましょう。
ネットやメディアなどから情報を収集する
もっともベーシックな反社チェックの方法であり、低コストで行うことが可能です。インターネット情報や新聞記事から該当の者や団体をチェックします。しかし、該当キーワードをひとつずつチェックする必要があるため時間がかかるうえ、限定的な情報しか確認できません。民間企業が提供しているツールもあるため、うまく活用するとよいでしょう。
探偵や興信所への依頼
探偵などの調査会社・興信所などに反社チェックを依頼する方法です。外部に依頼するコストはかかるものの、高精度の反社チェックが期待できます。コストを抑えたい場合は、反社との疑いのある者にのみ調査を依頼したり、ipo申請時に情報を記載した者を対象に依頼したりするのもおすすめです。
公的機関へ問い合わせる
警察や暴力団追放センターへ問い合わせることも可能です。確実性は高いものの、気軽に何度も問い合わせることができない方法といわれています。なぜなら、公的機関にデータ照会の必要性を認めてもらう必要があるからです。反社の疑惑が強い場合に利用する方法だと認識するとよいでしょう。
まとめ
ipo企業における、反社チェックの重要性を解説しました。重要なのは、ipo申請時だけでなく、継続的な反社チェックが必要であるという点です。たとえ、自身の企業に反社会的勢力とのつながりがなかったとしても、取引先や株主に関係者がいれば大きなリスクとなります。上場廃止や社会的信用の損失を防止するためにも、反社チェックは慎重に行うようにしましょう。