社員トラブルと素行調査の役割とは?詳しく解説
素行調査とは、その人の生活や行動を調査して身辺を明らかにするものです。
社員の素行調査では、業務中はもちろん、休日や退勤後の活動、交友関係などを調べ、その行動を把握することで自社の利益損失を未然に防ぐことができます。
【素行調査の目的】
- 競業避止義務違反の調査(ライバル企業に情報を流すなどの行為)
- 会社への背任行為の確認
- 反社会的勢力関係事実の確認
これらのような疑惑のある社員を放置しておけば、会社の社会的信用が損なわれ、情報の流出によって会社は大きな損害を被ることが予測されます。
このような疑惑のある社員を発見した場合、会社としては迅速に対応しなくてはなりません。
しかし、不明瞭な理由で社員を解雇することはできません。
そこで、素行調査で不正事実を確認し、適切な対応をする必要があります。
会社と社員のトラブル
会社の素行調査は、探偵や興信所に依頼して行うことが一般的です。
探偵に依頼すれば社外の調査も行いやすく、ヘッドハンティングや反社会勢力との接触、情報漏洩、企業情報のリークといった外部接触の調査も可能です。
また、新卒採用や中途採用を予定している応募者への経歴確認もできます。
実際、履歴書に経歴詐称があったとしても、面接や選考の段階でその真偽を判断するは困難です。
素行調査をすることで、そのような経歴の真偽や詳細を客観的に判断できます。
ここからは、さまざまな社員トラブルについて見ていきます。
解雇トラブル
企業にとって問題のある従業員の解雇は、「解雇無効」の主張によるトラブルになるケースが多々あります。
会社が従業員を解雇するには、「解雇の合理性」と「解雇相当性」が必要になります。
そして、会社が従業員を解雇する場合、従業員は民事裁判を起こして「従業員としての地位確認」と「未払賃金の請求」を求めるケースがあります。
このような場合、まずは労働審判が行われそれでも解決できなければ、労働訴訟に発展します。
もし、裁判で企業側が敗訴した場合は、従業員は会社に残ることになり、未払いの賃金を払わねばなりません。このような結果を避けるには、訴訟に勝つか、和解による同意で退職してもらうことになります。
残業代トラブル
近年、非常に多い労働トラブルが「残業代」に関するものです。
従業員が「残業代を支払ってくれない」として、訴えるパターンです。
しかし、従業員の残業代請求が正しいとは限りません。
従業員が計算や考え方を間違っているケースも多く、会社と従業員の見解が異なる場合には、従業員は労働訴訟を起こすことがあります。
訴訟になれば、未払い残業代に「遅延損害金」が課されるため、敗訴すれば支払金額が上がります。
裁判官の判断で「付加金」として、元本の2倍の金額が請求されることもあります。
残業代請求で企業側が敗訴すると、非常に不利になるため、相手の言い分と法的根拠の立証を見極めて、対応を決定する必要があります。
労災関係のトラブル
従業員が業務中や通勤・退勤途中に事故に遭い、労災が発生した場合、企業の責任が問われることもあります。
会社は労働契約にもとづき、労働者が安全に就労できる環境を提供する義務を負っています。
それを怠って従業員に怪我をさせた場合、企業には損害賠償責任が発生します。
この損害賠償義務は「労災保険」と別のものです。
労働者は、労災保険とともに企業に賠償金を求めることも可能です。
企業側が責任を認めず慰謝料などの支払を拒絶すると、労働者から民事訴訟を起こされます。
労災関係で訴訟を起こされると、「労災隠し」「劣悪な環境」などの悪い噂が広まり、風評被害が発生するケースもあります。
未払賃金・退職金
会社は経営難などを理由に、毎月の賃金が未払いになるケースがあります。
賃金の支払いは企業の義務であり、未払いが発生するとすぐに労働者から請求されます。
そして、支払いを拒絶すれば裁判を起こされ労働基準法違反の罰則もあります。
また、退職金関係のトラブルも多く、退職金規程での退職金を支払わなかった場合や不当に減額した場合、不支給決定をした場合など、従業員側から退職金の支払い請求訴訟を起こされます。
これらの金銭の主張では、従業員側の主張内容を正しく判断し、相手の言い分が不当であれば争う必要もあります。
セクハラやパワハラ問題
企業内では、セクハラやパワハラなどの従業員間の問題が発生するケースも多々あります。
会社には労働者との労働契約に基き、職場環境に配慮すべき義務があるため、個人間の問題では済まず、会社自身の責任を問われる可能性もあります。
セクハラやパワハラが起こり、会社が適切な措置をとらずに被害が大きくなれば、会社にも損害賠償義務が発生します。
このように、労働者は直接の加害者だけではなく、会社に対しても民事訴訟を起こせます。
もし、セクハラやパワハラで裁判を起こされれば、会社のイメージ低下により、従業員の士気も大きく下がります。
社員トラブルへの対応
「不当解雇トラブル」や「未払い残業代トラブル」を解決する裁判上の手続として、「労働審判」と「通常訴訟」があります。
通常は、労働者側がどちらの手続をとるかを選択します。
近年は、労働審判の件数が通常訴訟の件数を上回っており、裁判所で社員トラブルを解決するための制度として、主流になってきています。
労働審判制度は、「不当解雇トラブル」や「未払い残業代トラブル」など、従業員と会社のトラブル解決を簡略した裁判所の手続です。
平成18年4月から開始され、平成21年度以降、毎年全国で約3,500件の申し立てがされています。
労働審判と通常訴訟の違い
労働審判
- 期間:短期間(平均70日程度)
- 手続:簡略的な手続
- 効果:最終的な強制権限がなく、労働審判の結果に対していずれかから異議が出れば通常訴訟に移行する。
通常訴訟
- 期間:長期間(1年程度)
- 手続:正式な訴訟手続き
- 効果:最終的な強制権限がある。
労働審判制度が利用されるトラブルとしては、解雇・雇止めのトラブルが約45%、残業代をはじめとする賃金関係のトラブルが約39%を占めています。
社員からの労働審判申立て
労働審判手続は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名で組織する労働審判委員会が行います。
労働審判員は、雇用関係の実情や労使慣行等に関する詳しい知識と豊富な経験を持つ者が任命されます。
労働審判は話し合いですが、その中身は訴訟に近く、申立書も訴状の様なものが提出されます。
そのため、労働審判に挑む前の準備は大切です。
事実確認について法的に争いが生じる場面では、条文の解釈、過去の判例等を調べた上で答弁書を作成しなければなりません。
また、労働審判は、従業員が申立ててから原則40日以内に期日が指定されます。
そのため、内容証明郵便を受け取った交渉段階から、裁判所での手続を見据えて、事前に準備しておくことが重要です。
労働審判が出された場合でも、使用者と従業員との話し合いが難しく、一方が異議を申立てれば訴訟に移行します。
その場合も、争点を明確にしておけば、訴訟で争点のみを重点的に争うことができるため、訴訟に要する期間を短縮することができます。
まとめ
調査の専門家でない一般人が素行調査を行う場合、違反行為に及んでしまうリスクがあります。
素行調査は、各種法令を遵守する探偵などの専門家に任せることをおすすめします。
探偵に相談・依頼を検討する場合は、相談の際に具体的な調査手法、個人情報などの利用・保管方法などの説明を求め、適切か見極めることも必要になります。
投稿者プロフィール
- 10年以上にわたる探偵経験を持ち、調査分野のエキスパートとして認められている。これまでに手掛けた調査案件は年間200件以上にのぼり、その確かな調査力と洞察力で数多くの難解なケースを解決してきた実績を持つ。特に浮気調査や素行調査の分野で高い成功率を誇り、信頼と実績に基づいた調査を提供することを信条とし、クライアントからの高い満足度を誇る。
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