探偵に身辺調査を依頼できるケース、できないケース
浮気を疑ったり仕事で新たな取引を行うときなど、誰かのことを調べたいと思ったとき、まず思い浮かぶのは探偵による身辺調査でしょう。素行調査との違いや依頼できるケースについて解説します。
身辺調査とは
身辺調査、身元調査、素行調査など聞いたことはあっても、具体的にどう違うのかよくわからない人もいるでしょう。
身辺調査や身元調査は対象者の氏名、住所、家族構成などの人となりを調べる信用調査、素行調査は対象者の交友関係や生活パターンなどを調べる行動調査と考えると、わかりやすいです。
個人情報保護と調査
個人情報保護法の施行により、調査するには本人に目的を通知して許可を得る必要があります。
しかし、2004年2月、警察庁から探偵興信所業に向けて「興信所業者が講ずべき個人情報保護のための措置の特例に関する指針」が通達されました。指針の第3の3「対象者の個人情報の取扱いに関する特例」において、個人情報保護法第18条の「利用目的の通知」を行わなくてもいい場合を、下記のように定めています。
- ア 対象者が依頼者の配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)で、当該対象者について法令上の義務の履行を確保するための調査。
- イ 対象者が依頼者の親権に服する子で、依頼者が当該対象者に関して法令上の権利を行使し、又は義務を履行するための調査。
- ウ 対象者が依頼者の法律行為の相手方となろうとしている者で、当該法律行為をするかどうかの判断に必要な調査。
- エ 依頼者が犯罪その他の不正な行為による被害を受けている場合、当該被害を防止するための調査。
この特例措置により、探偵業興信所業者は法令に触れない適正な目的と方法であれば、様々な調査を行うことができます。
仕事に関する身辺調査
身辺調査と聞いて、仕事関連での調査をイメージする人も多いでしょう。配偶者でも子どもでもない、第三者ともいえる仕事関係者が身辺調査を依頼して問題ないのか不安に感じるかもしれませんが、これは「対象者の個人情報の取扱いに関する特例」の「利用目的の通知」のウ「依頼者の法律行為の相手方となろうとしている者」に該当すると考えられます。
採用候補者や取引先が対象
法律行為の相手と言うと訴えるなどの裁判が関係していると思われがちですが、仕事で契約を結ぶことも立派な法律行為です。採用候補者とは雇用契約を、取引先とは売買契約や賃貸借契約などを交わすため、その相手は対象者となり得ます。
採用候補者の場合、前職の仕事内容や賃金、トラブルの有無などを予め確認することで、マッチングミスを防げます。ただし、厚生労働省の公正な採用選考として、「家族状況や生活環境といった応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しない、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集は原則として認められない」と挙げられており、調査内容については注意が必要です。
対象が取引先の場合、信用調査、与信調査、企業調査とも呼ばれますが、要は円滑な取引を継続的に行うために相手の業績や社内コンプライアンス対策、過去の不祥事などを調べます。法人としての信用だけでなく、代表取締役や実際に取引を行う担当者など個人の信用調査も行われることが多いようです。その場合も社会的差別につながるような個人情報の収集は行えません。
個人に関する身辺調査
仕事ではなく、個人的な身辺調査を依頼できるケースとしては、「対象者の個人情報の取扱いに関する特例」の「利用目的の通知」のア「 対象者が依頼者の配偶者 」や、ウ「対象者が依頼者の法律行為の相手方となろうとしている者」、エ「依頼者が犯罪その他の不正な行為による被害を受けている場合」が当てはまります。もちろん、親権が有効な18才未満の子どもも対象です。
不倫、結婚相手、加害者が対象
具体的にどういう調査なら依頼できるのか解説します。
例えば不倫はアの配偶者と民法上の法的義務を履行していない条件を満たしているため、不倫相手を含めて、利用目的の通知なく身辺調査が可能です。
では、まだ結婚していない場合はどうかというと、結納を交わした、双方の親と正式に挨拶をした、婚約指輪を購入したなど結婚することが明確であれば、ウの法律行為の相手になろうとしている者に該当します。また、婚活サイトなどで知り合い、結婚を前提にした交際を決める際、相手が本当に独身かを調べるための調査も可能です。
そして、ストーカーや嫌がらせなどを行っている加害者についてはエの被害を受けている場合に合致します。警察に被害届を出すにしろ、示談や損害賠償を請求するにしろ、相手の氏名や住所が判明しなければ話は進みません。
依頼できない身辺調査
犯罪、違法行為目的や適正ではない方法による調査は行えません。自分で調べるのは無理でも、探偵だったらできるんじゃないかと思うかもしれませんが、「探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)」において、調査目的と方法が定められています。
第2条では探偵業が行える調査方法を「面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査」、第9条にて調査目的について「探偵業務に係る調査の結果が犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いられることを知ったときは、当該探偵業務を行ってはならない」と記されています。違反した場合には6カ月の営業停止、もしくは廃業となるため、届出をしている真っ当な探偵業者ならば、こうした調査には応じません。
ストーカー、DVのおそれがあるケース
「対象者の個人情報の取扱いに関する特例」の指針においても、利用目的の特定と探偵業務の禁止を以下のように定めています。
- 社会的差別の原因となるものであるおそれがあるとき。
- ストーカー行為等の規制に関する法律(つきまとい)目的や違法なものであるおそれがあるとき。
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(被害者の所在の調査)や不当なものであるおそれがあるとき。
探偵業としてはもちろん、個人情報保護の観点からも、違法性のおそれがある目的の調査は依頼できません。
まとめ
身辺調査は自分で行うよりも探偵などの調査機関に依頼したほうがリスクが少なく済みますが、目的によっては依頼できません。
また、近所の人から嫌がらせを受けているけれど、確信持てないなど対象者との関係性が明確でない場合も、詳しく事情を話すことで対策を練ることもできます。まずは相談してみましょう。
投稿者プロフィール
- 10年以上にわたる探偵経験を持ち、調査分野のエキスパートとして認められている。これまでに手掛けた調査案件は年間200件以上にのぼり、その確かな調査力と洞察力で数多くの難解なケースを解決してきた実績を持つ。特に浮気調査や素行調査の分野で高い成功率を誇り、信頼と実績に基づいた調査を提供することを信条とし、クライアントからの高い満足度を誇る。
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