アナウンサー採用事件と企業の素行調査について!詳しく解説
2015年4月、当時、日本テレビにアナウンサーとして、入社の内定を受けていた大学4年生の笹崎里菜さん(22)が、東京・銀座のクラブでのアルバイト経験を理由に、内定を取り消されました。
内定を取り消されたことを不服とした原告は、同社に地位確認を求め訴訟事件に発展します。
訴状の内容によると、笹崎さんは2013年9月、日本テレビ主催の「アナウンスフォーラム」に複数回参加し、2015年度のアナウンサー内定を文書で通知されます。
2014年に入り、日本テレビ側に銀座のクラブで短期アルバイトをした経験があることを伝えたところ、「傷が付いたアナウンサーを使える番組はない」と、5月に内定を取り消されたということです。
内定取り消しの法的観点
日テレ側の主張は、取消通知で内定に際し交わした誓約書で取消事由の「申告の虚偽」にあたる他、「アナウンサーには高度の清廉性が求められている」からとしています。
しかし、笹崎さん側は「清廉さに欠けるというのは偏見であり、全てのアルバイト歴を申告することを求めていなかった」と反論します。
この事件の争点は、「内定を取り消すほどの重大な理由」があったのかという点です。
まずは、前提として「採用内定」について確認しておきましょう。
「採用」と「内定」
採用とは、求職者がすべての選考プロセスに通過した状態を指します。
この時点では、企業が用意した選考に合格しているだけで、求職者が入社に合意しているわけではありません。企業が一方的に雇用の意思を示している状態といえます。
採用が確定した後、労働条件などをあらためて伝え、それに合意し入社の意思を示すことで、はじめて入社にいたります。このように、採用とは「労働契約が締結される前の状態」です。
そして、内定とは、すべての選考に通過した求職者と企業の間で雇用の合意が取れた状態、つまりは労使契約が成立した状態を指します。
過去の判例では、求人への応募は求職者による労働契約の申し込みであり、内定通知はその申し込みを承諾した状態とみなされています。
採用、内定のほかに「内々定」というものもあります。
内々定は、企業が求職者に対して将来内定を出す予定であることを約束した状態です。
内々定は主に新卒採用で利用されるもので、経団連の「採用選考に関する指針」によって、企業が新卒者に内定を出せる日が定められているためです。
「内定」と「契約」
「採用内定」という状態は、労働希望者からの申込みに対して、会社は採用内定を通知した時点で労働契約の承諾があったとみなされます。
会社と求職者との間には、「始期付解約権留保付労働契約」が成立することになります。
「始期付解約権留保付労働契約」とは、労働契約が開始される時期は決まっているが、それまでの期間に内定を取消すべき事情等が発生した場合には、会社は労働契約を解約する権利があるという労働契約です。
採用内定は、労働契約が成立しているものと解される一方で、会社が解約権を保持した状態をいいます。
しかし、合理的理由がなければ、解約権を行使することは濫用になることもあります。
地位確認請求とは
解雇により一方的に雇用契約上の地位を奪われた労働者が、その解雇の効力を争い、雇用契約上の地位があることを確認するのが「解雇無効・地位確認請求」の訴えです。
ここでの「地位」とは、あくまで法律や契約によって決められた地位であって、社会的地位ではありません。
解雇や退職の有効性を争うということは、「社員としての地位を確認する争い」になります。
解雇は、労働者の生活基盤を直接、脅かすことから、非常に厳しく制限されています。
「不当解雇」について
解雇が有効となる場合は、「客観的合理的理由」と「社会的相当性基準」を満たすことが必要です。
つまり、解雇をすべきと第三者が納得できる理由が求められる場合であり、解雇しか選択肢がない場合です。
主観的な理由で解雇はできない
客観的な理由が求められている以上、好き嫌いや使用者との関係性やその場の勢いなどの主観で、解雇することはできません。
会社が客観的な証拠を出せなければ、解雇は無効になります。
解雇に至る前の改善指導
仕事ができない社員の場合、それを理由に解雇することはできません。
不当解雇となるケースとして、会社が改善指導を行っていなかったことも挙げられます。
労働者は、成長していくものです。
多少のミスがあったとしても、それを改善しないのは会社の落ち度になります。
整理解雇
整理解雇の場合は、会社の都合による解雇のため不当解雇を訴えられます。
整理解雇は、解雇の中でも特に厳しい制限がされています。
- 人員を減らす必要があること
- 人員を減らさないための努力を尽くしたこと
- 合理的に整理解雇の対象者を選んだこと
- 事前に周知して十分な話し合いをしたこと
場合によっては、会社の状況についても証明する必要があります。
採用時の素行調査
ここでは、採用時に企業が行う素行調査について解説いたします。
法律では、応募者の素行調査を認めています。
ただし、厚生労働省では、「公正な採用選考を行うため採用選考時に配慮すべき事項」として以下を挙げています。
- 身元調査などの実施
- 本籍・出生地、家族、住宅状況、生活環境・家庭環境
- 宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、
- 労働組合・学生運動、購買新聞・雑誌・愛読書
採用の自由
企業には、採用の自由があります。
採用の自由とは、個人の思想信条の自由などと共に、憲法で定められる企業の権利です。
その権利は、法律その他別の制限が無い限りは、広い裁量を有しています。
企業は労働者の採否決定にあたり、採用時のミスマッチを防止するため、求人の際の条件を明確にしています。
- 「どういう人物を求めているのか」
- 「どういったスキルが必要なのか」
- 「どのような社風なのか」
などが、挙げられます。
採用調査について
採否決定では、職務経歴書等から判断することが通常ですが、中には誇張表現等もあるため、的確に反映できない可能性があります。
そのため、応募者の素行から採用を判断することもあります。
企業の採用調査実施の考えとして、以下のような理由が挙げられます。
- 問題社員の入社を防ぎ、合理的かつ公正な採用選考の実現
- 社員の質を上げる事で、生産性を上げる
- 採用担当者の心理的負担と実務の軽減
- 採用時にセキュリティを設けることで、社内ルールに対する意識を高める
- 第三者評価を取り入れることで、採用者の理解を深めてオンボーディングを円滑に行う
探偵が行う素行調査
探偵や興信所では、尾行や張り込みなどの専門的な方法を用いて、個人の素行調査を行います。
【日常の素行を確認】
会社での一面とは異なる、生活上での行動を把握することで、対象者についてより詳しく知る事ができます。
素行調査の調査報告書に関しては、映像や音声、写真などで詳細を確認できます。
【交友関係の確認】
対象者の交友関係について分析する事ができ、危険な団体や交友関係についてのリスクを未然に回避できます。
また、対象者の出入りする店舗の情報なども詳細に調査できます。
【ギャンブル・浪費癖】
素行調査を一定期間行うことで、金銭の使い込みや借金についての情報が判明する事もあります。
【違法行為の確認】
日常的な違法行為や、トラブルに発展するリスク等について、専門家の目を通して確認できます。
発生してからでは取り返しのつかない損害を未然に察知し、回避するための有効な調査となります。
まとめ
採用時の素行調査は、応募者について普段の行動・素行や人間関係、犯罪歴や民事訴訟歴などについても調査することがあります。バックグラウンドチェックや身辺調査とも言われています。
なお、アナウンサー採用に関する訴訟は、日テレ側が笹崎さんを「アナウンス部に配属予定の内定者」に戻す
との内容で、和解が成立しています。
投稿者プロフィール
- 10年以上にわたる探偵経験を持ち、調査分野のエキスパートとして認められている。これまでに手掛けた調査案件は年間200件以上にのぼり、その確かな調査力と洞察力で数多くの難解なケースを解決してきた実績を持つ。特に浮気調査や素行調査の分野で高い成功率を誇り、信頼と実績に基づいた調査を提供することを信条とし、クライアントからの高い満足度を誇る。
最新の投稿
- 家出・所在調査11月 7, 2024SNSで人を探す方法と注意点
- 浮気調査11月 1, 2024探偵による浮気調査の流れと方法を徹底解説
- 素行調査10月 18, 2024興信所の素行調査料金の相場とは?料金プランと調査能力を見極めるポイント
- 採用調査3月 6, 2023リファレンスチェックで質問して良い内容・質問してはいけない内容とは