怪文書は脅迫になる?怪文書の犯罪性と脅迫について解説!
インターネットの普及やコンビニで手軽に印刷できることもあり、他者を攻撃することへのハードルが低くなっています。怪文書は単なる悪口やイタズラでは済まされない犯罪行為にもなり得ます。今回は、脅迫に該当するケースについて解説します。
怪文書の刑事的責任
怪文書と聞くと企業への誹謗中傷や選挙におけるネガティブキャンペーンなどを思い浮かべる人も多いと思います。しかし、決して対岸の火ではなく、いつ自分の身に振りかかってもおかしくないトラブルのひとつです。
怪文書は匿名による不審な文書で、嫌がらせを目的としていることがほとんどです。ちょっとした行き違いや逆恨みから人間関係がこじれ、不審なチラシや手紙が送られてきたり、ネットに書き込まれる事態に発展することも珍しくありません。
怪文書の内容によって変わる犯罪の種類
怪文書はその内容によって、以下の5つの犯罪が成立する可能性があります。
- 名誉毀損
第230条「公然と事実を摘示し人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する」とあり、公の場で何らかの事実を記した怪文書を配るなど流布させて、名誉を毀損した場合に該当します。 - 侮辱
第231条「事実を摘示しなくても公然と人を侮辱した者は、拘留または科料に処する」とあり、事実を記さずに侮辱した場合に該当します。刑法改正により、1年以下の懲役と禁錮、30万円以下の罰金と厳罰化される予定。 - 信用毀損及び業務妨害
第233条「虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した者は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」とあり、虚偽の噂や企みによって経済面での信用を毀損した場合は信用毀損、業務を妨害した場合は業務妨害が該当します。 - 脅迫
第222条「生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」とあり、名誉や財産などを害することを告げる行為が該当します。 - ストーカー規制法
第2条の定義により、以下の項目に該当する可能性があります。2.監視していると告げる行為、5.無言電話、連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS・文書等、7.名誉を傷つける、8.性的しゅう恥心の侵害。
脅迫が成立する要件
怪文書が該当する犯罪の中でも、脅迫は判断がつきにくいといえます。ここでは、脅迫罪が成立するために必要な条件を解説します。
該当利益に対して害を与える告知
脅迫は「生命、身体、自由、名誉、財産の5項目の利益」を対象に、「害を与えることを告知」しているという、2つが大きなポイントです。
害を与える告知といっても、ピンとこない人も少なくないでしょう。具体的には、「ぶっ殺してやる(生命)」、「痛い目に合わせてやる、どうなっても知らないぞ(身体)」、「閉じ込めてやる、さらうぞ(自由)」、「〇〇を言いふらすぞ(名誉)」、「家に火をつける、ペットを殺す(財産)」などが挙げられます。また、「法的処置をとる、訴える」という言葉は、真実の追及や実際に告訴する意思、可能性がないにも関わらず脅威を感じさせることを目的としていれば、脅迫が成立します。
しかし、こうした言葉を使ったからといって、全て脅迫が成立するわけではありません。加害者との関係性や体格、社会的なパワーバランス、時間、場所などの状況も踏まえて、一般的に恐怖を感じるかどうかで判断するようです。例えば仲のいい友達とふざけていて「今度会ったら、殴る」と送ったとしても、脅迫が成立する可能性は低いといえます。
対象は本人もしくは親族
脅迫は刑法第222条の2に「親族の生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする」とあることから、本人だけでなく親族も対象となります。
「子どもが痛い目に合うぞ」「親や兄弟を殺す」は脅迫に該当しますが、「恋人がどうなっても知らないぞ」「友達を襲う」など本人と親族以外を対象にしたものは、脅迫には該当しません。
ちなみに、親族は民法725条によって「1.6親等内の血族、2.配偶者、3.3親等内の姻族」と定められています。6親等は子ども、孫、ひ孫、親、祖父母、曽祖父母、叔父叔母、甥姪、いとこ、3親等の姻族は配偶者の親や祖父母、兄弟姉妹や甥姪とされています。
脅迫に方法は問われない
脅迫というと、面と向かって「殺してやる」と脅されたり、「訴えてやるからな」と怒鳴られる場面をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、脅迫の成立要件に告知方法の特定はされていないため、対面でなくとも該当します。
文書やネットの書き込みなどの怪文書も該当
脅迫は本人や親族に対して、対象の害を与える意思を伝えれば成立します。その方法は、直接会って口頭で伝える以外にも電話、FAX、文書、メールも含まれており、ネットの掲示板やSNSで個人が特定できる書き込みも該当すると考えられます。特にここ数年でネット上の誹謗中傷の取り締まりは強化され、立件しやすくなっています。
脅迫は暴行を加えたり、火をつける、不利益になる情報を拡散させるといった行為をしなくても、「害を与える旨の告知」をした時点で成立する可能性が高いです。
脅迫に該当する内容の怪文書が送られてきたけれど、実際に何かされたわけじゃないからと放置するのは厳禁です。手紙やチラシの保管はもちろん、ネットの書き込みの場合は該当画面のスクリーンショット、メールやメッセージの履歴保存、音声録音などで証拠を確保しておきましょう。
まとめ
怪文書は書かれていた内容によって成立する犯罪が異なり、「痛い目に合わせる」や「車を壊してやる」など生命、身体、財産などに害を与えようとする場合、脅迫が成立すると想定されます。しかし、個人的なやり取りの中で起こることが多いため、立証が難しいことも事実です。
放置して深刻な事態になる前に証拠を確保したうえで、探偵などの調査機関に相談、依頼をするのもひとつの方法です。自身が注意すべき言動や必要な情報、証拠などが明確になり、冷静な対処ができます。
投稿者プロフィール
- 10年以上にわたる探偵経験を持ち、調査分野のエキスパートとして認められている。これまでに手掛けた調査案件は年間200件以上にのぼり、その確かな調査力と洞察力で数多くの難解なケースを解決してきた実績を持つ。特に浮気調査や素行調査の分野で高い成功率を誇り、信頼と実績に基づいた調査を提供することを信条とし、クライアントからの高い満足度を誇る。
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