背任罪に問われた時の懲戒処分はどうなる?懲戒処分の種類や傾向を解説

労働者が任務に背いて会社や個人に損害を与える「背任行為」を行った場合、会社から労働者に対して懲戒処分が科されます。今回は、労働者が行った背任行為に対して科される懲戒処分について解説していきます。
背任行為とは自分または第三者の利益のために任務に背いて他人に損害を与える行為

背任行為とは「会社や個人など、他人のためにその事務を処理する人が、自分または第三者の利益のために、任務に背いて会社や個人に損害を与える行為」のことです。
これは刑法247条に定められている「背任罪」に該当し、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。ちなみにこれは未遂でも処罰されることが刑法250条に定められています。背任行為の例として、架空の取引を行って利益を得る、社内の機密情報を有料情報としてネット上で公開するなどがあります。この例のように背任に該当するのは元々あった財産に損害を与える「積極的損害」と、得られるはずの利益に損害を与える「消極的損害」の2種類があります。最近では元日産会長のカルロス・ゴーン氏が会社の資金を私的に流用した事件が起きており、これは「特別背任罪」に当てはまります。特別背任罪とは社内の役員や幹部など重要な役割を担っている人に対して問われるもので、通常の背任罪よりも重い処罰が科されます。
似たような犯罪に「横領罪」がありますが、行為や目的が異なります。横領行為は「他人のものを自分のものにする」と限定されており、目的も「自分のものにする」と限定的です。対して背任行為は「任務に背いて損害を与える」と幅広く、目的も「自分または第三者の利益のため」と幅広いです。そのため、横領行為に該当しなくても、背任行為には該当するというケースもあります。
背任罪で逮捕されることもある
会社と背任行為を行った労働者との示談がまとまらない場合、労働者が逮捕されるケースもあります。背任行為が発覚すると、会社は事実関係を調査し不正を犯した社員に対して損害賠償請求を行います。もし示談がまとまらない場合、会社は警察に被害届を提出したり、刑事告訴を行います。その後警察が捜査で必要と感じれば労働者を逮捕することもあります。
背任行為に対する懲戒処分は労働契約を継続するものと解消するものがある

懲戒処分には労働契約を継続したまま科すものと、労働契約を解消する2種類の処分があります。継続したまま科す懲戒処分には「譴責」、「戒告」、「減給」、「出勤停止」、「降格」などがあります。譴責は社員の将来を戒めるために行う処分で労働者に提出させる処分です。これと似た処分が戒告で、始末書を提出させないため譴責に比べて軽い処分です。これは注意や指導と異なり、懲戒処分なので法律上の規制があります。減給は労働者に支払う予定の賃金から一定の割合を差し引く処分です。出勤停止は労働者に一定期間働くのを禁止する処分で、該当期間中は賃金が発生しません。この期間については7日から10日が多いですが、1か月など長期期間のものもあります。降格は労働者の職位を引き下げる処分で、役職手当などの基本給も減額が発生します。
対して労働契約を解消する処分は「懲戒解雇」と「論旨解雇」があります。懲戒解雇は会社の秩序を乱す社員に対して科す懲戒処分の中では最も重い処分です。退職金については一部、または全額不支給というケースが多いです。論旨解雇は懲戒解雇に該当するものの本人が反省している場合に科される懲戒処分で、解雇理由を説明し退職届の提出を促す懲戒処分です。その重さは懲戒解雇よりもやや軽く、退職金は自己都合に準じた金額を支払う、あるいは一部減額した金額を支払います。懲戒処分を科す際はその行為で発生した損害の金額、背任行為を行った回数、背任行為を行っていた期間、そして労働者の地位、その行為の業務への関連性などから決定されます。また、懲戒処分を科す場合、会社がその処分内容を自己判断してしまうと懲戒処分の無効を訴える訴訟が起こされてしまうリスクがあります。そのため、会社側は弁護士に相談し適正な処分を決定することが多いです。
背任行為に対しての懲戒処分は重くなる傾向にある

裁判所は背任行為に対してはその責任を重く見ることが多く、最も重い処分である懲戒解雇が有効とする傾向にあります。これは就業規則で定められている「業務に関し、不当に金品を要求したり、これを享受したり、または私利を図った場合」に該当するからです。
例えば、お金を着服するなどの背任行為に対しては判例を見ると懲戒解雇の処分が科されていることが多いです。それ以外も論旨解雇や降格など比較的重いものが科されています。また、謝礼金の受領などの背任行為に対しては判例を見ると懲戒解雇や論旨解雇などが科されることが多いです。他にも同僚の背任行為を黙認するなども第三者の利益を図るため背任行為に該当します。この場合判例では譴責など比較的軽いものから、懲戒解雇など重い懲戒処分が科されています。
ちなみに懲戒解雇が有効となるのは雇用関係があることが前提です。そのため、退職届によって退職の効力が発生してからは懲戒解雇を行うことはできません。会社側としては退職届の提出が行われる前に懲戒処分を行う必要があります。
業務外の背任行為で懲戒処分が科される場合もある
私生活など、業務外での背任行為についても懲戒処分を科す場合があります。具体的にはその行為の悪質さ、会社の事業内容、規模、地位、加えて社内における労働者の地位や職種など様々な角度から判断されます。また、その行為によって会社の評価に悪影響を及ぼすなど、客観的に重大と判断される場合は懲戒処分が科されます。
まとめ
今回は背任行為を行った場合の懲戒処分について紹介してきました。懲戒処分には労働契約を継続させるものとそうでないものがあり、業務への関連性や労働者の地位などの要素を鑑みて判断されます。もし、背任行為を行ってしまった場合は弁護士に相談するようにし、示談交渉を進めるようにしましょう。
投稿者プロフィール

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