背任行為と「ほう助」について!どのようなものか解説

背任罪の事件は、不正貸付や架空取引などが会社に発覚するところから始まります。
不正を知った会社は、事実関係を調査して不正を犯した社員に対し、損害賠償請求をすることが一般的です。
まずは、社員と示談交渉しますが、示談が成立しなければ、警察に被害届を出したり、犯行が悪質と判断した場合には、刑事告訴されるケースもあります。
また、その犯行の「ほう助」を行なった者も、処罰の対象となることがあります。
背任行為について

「背任行為」とは、法律上の信任義務に対して背く行為をいいます。
刑法では、財産上の事務処理を任された人が、自分又は第三者の利益のため、又は事務処理を委託した本人に損害を与える目的をもって、その任務に反する行為をし、損害を与える罪としています。
背任罪(刑法第247条)
背任罪は、横領罪や詐欺罪などの「財産犯」に分類される犯罪です。
また、背任罪には複数の学説が存在し、過去の判例をくらべても意見がわかれ、成立の判断が難しい犯罪でもあります。
【背任罪の構成要件】
- 他人のためにその事務を処理する者
- 自己もしくは第三者の利益を図り、または本人に損害を加える目的(図利加害目的)
- その任務に背く行為
- 本人に財産上の損害を加えたとき
「他人のためにその事務を処理する者」とは、委託者から事務処理を委託された者をいいます。
会社に雇われ、業務を行っている社員などを指します。
あくまで、「図利加害目的」の場合であって、本人(委託者)の利益を図る目的である場合では、背任罪が成立しないことになります。
つまり、会社の利益につながると信じたうえでの行為は成立しません。
「その任務に背く行為」とは、委託者から与えられた任務に背く行為です。
これらの目的で、その行為事実による「財産上の損害」が発生することで、背任罪が成立します。
もし、これらの目的と行為があっても、損害が発生しなかった背任未遂の場合でも処罰の対象となります(刑法 第250条)。
特別背任罪
特別背任罪は、会社法第960条1項で定められているものです。
構成要件は、背任罪とほぽ同じものです。
元日産の会長カルロス・ゴーン氏が、この容疑で逮捕されています。
特別背任罪での「特別」の意味は、その行為者が会社の取締役や支配人など一定の地位にある人を指しています。その者が、背任罪の要件に該当していれば、「特別背任罪」になります。
処罰の対象者は、社会的に大きな影響を及ぼすことがあるため、罰則は「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれを併科」となっています。
時効も、通常の背任罪、5年に対して、7年に引き上げられています。
背任と横領の違い
横領罪は、自分が管理している財産(他人の)を任務に反して着服した場合に成立します。
背任罪は、任務に反して財産の着服以外の方法で、損害を与える行為です。
背任罪では、成立範囲が横領罪に比べて広くなり、横領罪は成立しないが、背任罪が成立するケースも考えられます。
横領罪と背任罪の法定刑は、以下のとおりです。
- 横領罪……5年以下の懲役
- 背任罪……5年以下の懲役または50万円以下の罰金
懲役刑の上限は同じですが、背任罪には罰金刑が設けられています。
そのため、横領罪の法定刑の方が重いということです。
両罪が成立しうる状況では、横領罪が成立することになります。
背任罪での損害賠償請求
民事上の責任追及としての損害賠償請求には、
- 債務不履行としての請求
- 不法行為としての請求
があります。
時効に関しては、債務不履行としての請求の場合は、背任行為の時から10年。
不法行為としての請求の場合は、背任行為を知った時から3年、または背任行為の時から20年となります。
ほう助行為について

犯罪の実行行為を「正犯」といい、ほう助(幇助)とは、正犯者の実行行為を手助けする行為をいいます。
また、正犯の手伝う行為を「従犯」として、刑法62条1項に規定しています。
(ほう助)
第六十二条 正犯をほう助した者は、従犯とする。
2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
ほう助犯の量刑
ほう助犯も共犯行為の一つですが、刑法第63条は「従犯の刑は、正犯の刑を減軽する」と定めています。
刑法第68条の規定では、「三 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。」としています。
詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役ですので、減軽が認められた場合は、5年以下の懲役となります。
ほう助犯などの従犯の場合、共犯関係であったとしても刑が減軽されるといえます。
共同正犯・共謀共同正犯との違い
共同正犯は、当人にも正犯意思があります(自分で犯罪を実現させようとする意思)。
そして、共謀共同正犯の成立要件は、
- 犯罪を共同遂行する意思、あるいは正犯の意思があること
- 共謀の事実があること
- 共謀に基づいた実行行為があること
共同正犯・共謀共同正犯では、「ともに犯罪を遂行する」という意思を伴っています。
ほう助犯は、単に「犯罪の手助けをする」という程度の行為をさします。
背任罪の共同正犯 (最決平成20年5月19日 刑集62巻6号1623頁)
銀行の融資に係る頭取らの特別背任行為において、当該融資の申込みにとどまらず、その実現に積極的に加担した融資先会社の経営者に、特別背任罪の共同正犯の成立が認められた判例があります。
【裁判要旨】
融資先会社の実質的経営者は、融資の前提となるスキームを頭取らに提案し、同融資の担保物件の担保価値を大幅に水増しした不動産鑑定書を作らせるなどしました。
その行為について、同融資(上記特別背任行為)の実現に積極的に加担し、共同加功したとみなされました。
背任罪は、「他人のためにその事務を処理する者」を主体とする犯行であると理解されるため、事務処理者でない者が事務処理者の背任行為に加担した場合にも、背任罪の共犯となります。
そして、判例によれば、共同正犯も65条1項の適用領域にあるとされているため、事務処理者と共謀して背任行為の実行に加功した非身分者についても、背任罪の共同正犯となるとされています。
民法でのほう助行為
民法上では、「不法行為者」に対して教唆、ほう助した者は、共同不法行為と同様の取扱いをすることとしています。共同不法行為とは、複数の者が共同の不法行為によって他人に損害を与えることをいいます。
(共同不法行為者の責任)
第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及びほう助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
ただし、これは狭義の不法行為と言われており、民法上の共同不法行為は、この不法行為以外にも共同
行為者の誰の行為が損害を与えたか分からない場合も、共同不法行為として取り扱われています。
まとめ
犯罪の実行行為を自ら行っていない場合であっても、実行犯による犯罪の実行に何らかの影響を及ぼしたとし
たら、「教唆犯」、または「ほう助犯」という罪の可能性があります。
行為の態様や犯罪の重大性によっては、逮捕・起訴されることも十分考えられます。
投稿者プロフィール

- 10年以上にわたる探偵経験を持ち、調査分野のエキスパートとして認められている。これまでに手掛けた調査案件は年間200件以上にのぼり、その確かな調査力と洞察力で数多くの難解なケースを解決してきた実績を持つ。特に浮気調査や素行調査の分野で高い成功率を誇り、信頼と実績に基づいた調査を提供することを信条とし、クライアントからの高い満足度を誇る。
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