ストーカー規制法の改正は、探偵業務にも関係します
GPSを使った行動監視は、ストーカー規制法の「見張り」には当たらないとされていました。
過去のGPSに関する犯罪では、GPSを取り付けるために他人の敷地内に入ったという「不法侵入」による立件でした。
しかし、ストーカー規制法の改正により、「GPSの取り付け」と「位置情報を無承諾取得」という直接的な立件が可能になりました。
ストーカー規制法の改正
日本のストーカー被害が、近年、増加傾向にあることから、ストーカー規制法が2021年6月と8月に改正されました。
- 住居、勤務先、学校などの住居等以外の場所でのつきまとい行為の規制
- 手紙の郵送の規制
- GPS機器等を用いた位置情報の無承諾取得等の規制
- 禁止命令等の公示送達が可能になった
ストーカー規制法改正の背景とその概要
ストーカー規制法は、正式名称を「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といいます。
ストーカー規制法による規制対象は、「つきまとい等」「位置情報無承諾取得等」「ストーカー行為」の3つです。
恋愛感情など好意の感情を満たす目的や、その感情が満たされなかったことへの恨みを晴らす目的での行為と規定されています。
同じ行為であっても目的が異なる場合、この法律は適用されません。
「ストーカー行為」とは、「つきまとい等」又は「位置情報無承諾取得等」を繰り返して行うことを指します。
特定の相手にもつ恋愛感情やその他の好意からくる感情、またその感情が満たされなかった恨みからくる感情を充足させる目的で、迷惑行為を繰り返すのがストーカーです。
警察はストーカーに警告を与え、改善が見られなければ逮捕し、被害者を保護することができます。
ストーカー規制法は2000年11月、暴力や脅迫などの被害に遭う前の段階である「つきまとい等」の行為への規制が、初めて法的に認められました。
そして、2013年6月の法改正で、被害者から拒否された上での連続したメール送信が「つきまとい行為」の規制対象に追加されました。
- 相手に拒まれても繰り返し電子メールを送信する行為をつきまとい行為に追加
- 被害者の住所地だけでなく、加害者の居住地や違法行為があった場所の警察署・公安委員会でもつきまとい行為に対する禁止命令や警告を出せる
- 警察が警告を出した場合には被害者に知らせ、警告しない場合であっても理由を書面で通知する
また、2016年12月の法改正では、SNSやブログなどで悪意のあるメッセージを送るなどの事例を受け、SNS上での嫌がらせが「つきまとい行為」の規制対象に追加されています。
- Twitter・LINEなどのSNSなどでのメッセージの連続送信
- 個人のブログへの執拗な書き込みを、つきまとい行為
- 罰則の強化
- 親告罪から非親告罪へ変更
- 緊急の場合、事前の警告や聴聞などを経ず、また、被害者の申し出の有無に関わらず公安委員会は禁止命令を出すことができる
- 禁止命令の有効期間の明文化(原則1年・延長可能)
- ストーカー行為などをする恐れがある者に対し、行為対象となる相手方の個人情報などを提供する行為の禁止
- 警察・司法関係者の被害者の安全確保と秘密保持義務
- 国や自治体は被害者に対して民間滞在(民泊など)の支援や公的賃貸住宅への入居に関する支援に務める
「つきまとい等」とは
- つきまとい・待ち伏せ・押しかけ等
- 監視していると告げる行為
- 面会・交際等の要求
- 粗野・乱暴な言動
- 無言電話、連続した電話・文書の送付・ファクシミリ・電子メール
- 汚物等の送付
- 名誉を傷つける
- 性的羞恥心の侵害
令和3年(2021年)ストーカー規制法改正
近年、元交際相手等の自動車等にGPS機器をひそかに取り付け、その位置情報を取得する事案がみられるなど、最近におけるストーカー事案の実情を踏まえ、令和3年5月26日にストーカー規制法の一部を改正する法律が公布されました。
令和3年8月26日から、GPS機器等を用いた位置情報の無承諾取得等が規制されるとともに、禁止命令等に係る書類の送達に関する規定が整備され、その送達を受けるべき者の住所及び居所が明らかでない場合には、都道府県公安委員会はその送達に代えて公示送達をすることができるようになりました。
「位置情報無承諾取得等」とは
「位置情報無承諾取得等」とは、相手方の承諾なく、GPS機器等の位置情報を取得する行為で、ストーカー法で禁止されています。
これは、「恋愛感情等充足目的」のうえで「位置情報無承諾取得」した場合の規制になります。
以下のようなケースは規制対象外で、社会通念上、許容されている範囲のものです。
- 雇用者が業務管理の為、業務中の従業員の位置情報を確認する
- 直系親族等が未成年の子どもや認知症の高齢者等の位置情報を確認する
- 不貞行為の証拠収集の為、夫婦間の共有財産である車両の位置情報を確認する
改正により違法となる行為(GPS等の取り扱い)
令和2年7月30日の最高裁判決において、被害者の自動車にGPS機器をとりつけて遠隔で監視する行為について、ストーカー規制法第2条1項1号の「見張り」には当たらないという判決がありました。
この判決は、世間に大きな衝撃を与え、現実問題としてGPS機器を使った行為を現状のストーカー規制法で取り締まることが難しくなりました。
そのため、この判決を契機にストーカー規制法の改正が急がれ、令和3年5月18日、改正ストーカー規制法が衆院本会議で可決、成立しました。
改正ストーカー規制法の特徴
【GPS機器等を用いた位置情報の無承諾取得等】
- 相手方の承諾なく、相手方の所持する位置情報記録・送信装置(GPS機器等)の位置情報を取得する行為
- 相手方の承諾なく、相手方の所持する物に位置情報記録・送信装置(GPS機器等)の位置情報を取り付ける行為
が新たに規制対象になります。
これらの行為の規制は、令和3年8月26日より施行。
【相手方が現に所在する場所における見張り等】
- 住居、勤務先、学校など相手方が通常いる場所に加え、相手方が実際にいる場所の付近において、見張る、押し掛け、みだりにうろつく行為
が新たに規定対象となります。
これらの行為の規制は、令和3年6月15日より施行。
【拒まれたにもかかわらず、連続して文書を送る行為】
- 電話、FAX、電子メール、SNSメッセージに加え、拒まれたにもかかわらず、連続して、文書を送る行為
が新たに規定対象となります。
これらの行為の規制は、令和3年6月15日より施行。
【GPS機器等による位置情報の取得行為】
- 車や物に取付けたGPSで位置情報を取得
- スマホに無断でアプリを入れ位置情報を取得
【GPS等を取り付け行為】
- 相手方の所持する車両にGPS機器を無断で取り付ける
- GPS機器をひそかに取り付けたものを相手方に渡す
まとめ
三度目となる令和3年の改正では、つきまとい等が適用される場所や方法が拡大されたほか、GPS機器などによる位置情報の無承諾取得が規制対象に追加されました。
法改正に伴って、取り締まりが強化されるため、思いがけずストーカー行為の加害者となってしまうトラブルも予想されます。探偵業従事者は、今後、さらに慎重な調査が要求されることになるでしょう。
投稿者プロフィール
- 10年以上にわたる探偵経験を持ち、調査分野のエキスパートとして認められている。これまでに手掛けた調査案件は年間200件以上にのぼり、その確かな調査力と洞察力で数多くの難解なケースを解決してきた実績を持つ。特に浮気調査や素行調査の分野で高い成功率を誇り、信頼と実績に基づいた調査を提供することを信条とし、クライアントからの高い満足度を誇る。
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