背任罪と横領罪の違いって?その疑問にお答えします
背任罪(はいにんざい)という言葉を聞いた事がありますか?横領罪(おうりょうざい)はテレビやネットニュースなどで見たり聞いたりした事がある人が多いと思います。どちらも罪であることは同じですが、似ている部分もあり、混乱してしまうこともあるかも知れません。
そこで、今回の記事では背任罪と横領罪の違いについて、詳しく解説していきたいと思います。
背任罪(はいにんざい)ってどんな罪?
背任罪とは、刑法第247条、「他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図りまたは本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。」と定められている犯罪です。この文だとわかりにくいと思いますので、わかりやすく解説していきたいと思います。
背任罪の意味
- 「他人のためにその事務を処理する者」
他人のためとは、一般的に「会社や企業」のことを指しており、(友人なども含まれる)事務処理をするものは「会社の事務処理(経理など)を行なっている社員」のことを意味します。会社組織だけでなく、友人、知人と経営する個人事業の場合も該当します。簡単に言えば「人の仕事の事務を代行している人(従業員)」のことです。 - 「自己もしくは第三者の利益を図りまたは本人に危害を加える目的で任務に背く行為」
事務処理を行なっていた人が、自分のため、もしくは別の誰かのために、その仕事を悪用して利益を得ていることを指しています。また本人に危害を加えるというのは、他人(会社)に実害を与える目的で悪用していることです。この内容には「図利加害目的」が定められています。
※図利加害目的とは、他人(会社)の利益になると思って行なった行為の場合は背任罪にならないということ - 「本人に財産上の損害」とは
ここが横領罪に似ている部分ですが、簡単にいうと、会社の事務処理を行なっていた社員が、自分か第三者の利益のためにお金を着服していたり、横流ししていることです。
特別背任罪
背任罪とは別に「特別背任罪」という犯罪もあります。これは、刑法ではなく会社法で定められている罪で、会社役員、取締役、支配人といった役職を持った人が罪を犯した場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処されます。
横領罪(おうりょうざい)ってどんな罪?
背任罪の内容についてはご理解頂けたと思います。ここで気になるのが、「横領罪に酷似している」点だと思います。二つの罪を比べる前に、横領罪について、一から見ていきましょう。
横領罪(おうりょうざい)とは
横領罪は、自己の所有する他人の金銭や物品を横領した際に課せられる罪です。企業で例えると「会社のお金を勝手に使った」「経費を私的なものに使っている」などといったものが横領罪となります。また横領罪の特徴は、会社だけでなく、個人的なものにも罪が適応されるということです。例えば、「他人が落としていた財布からお金を使用する」「駅などに落ちているスマホを使用、売買する」などの行為も横領罪として罪に問われます。
横領罪の種類
横領罪には以下の種類が存在します。
- 単純横領罪
単純横領罪とは、他人の所有するものを、勝手に自分のものとした場合に適応される罪で、他人から借りているものを勝手に売ったり、自分のものにしてしまう行為が該当します。有罪の場合、5年以下の懲役が課せられます。単純横領罪は、極端な話「友達から借りたものを返さない、もしくは売却した」などの理由でも課せられる罪なので、一般の人でも身近な横領罪になります。 - 業務上横領罪
業務上という名の通り、業務中に扱っているものを自分のものにしたり、利益に変えてしまった場合に適応される罪です。横領罪としては罪が重く、有罪の場合は10年以下の懲役が課せられます。「経理を担当の従業員が、帳簿をごまかしお金を騙し取っている」などの場合は業務上横領罪になります。 - 遺失物等横領罪
この罪は、他人の遺失物や漂流物を勝手に自分のものにする、売却する行為を行なった際に適応される罪です。有罪の場合は1年以下の懲役もしくは10万円以下の罰金となります。わかりやすく言うと、「拾った財布を自分のものにする」「人のものである可能性の物を拾って売却する」行為を行うと遺失物等横領罪になります。
背任罪と横領罪の違いってなに?
二つの罪は似ている部分もありますが、異なる部分もあります。そこで、ここでは背任罪と横領罪にはどのような違いがあるのか、詳しく見ていきたいと思います。
罪を犯す「行為」に違いがある
横領罪では、「他人の物を勝手に自分のものにしたり、処分(売却)すること」が適応範囲であるのに対し、背任罪では「任務に背いて損害を与えること」としており、行為に関しては指定していません。そのため、横領罪にならないような内容でも、背任罪は適応されるという状況があります。
罪を犯す「目的」が違う
横領罪では、「人のものを自分の所有物とする」という目的に対し、背任罪では、自己の利益以外「第三者の利益」も含まれているため、自分の利益が無かったとしても罪が適応されるのです。背任罪は横領罪よりも目的は広範囲であると言えるでしょう。
罪の重さが違う(刑罰)
一部例外はあるものの、横領罪と背任罪では罪の重さが違います。
- 横領罪・・・・5年以下の懲役
- 背任罪・・・・5年以下の懲役または50万円以下の罰金
懲役刑の刑期は同じですが、横領罪には50万円以下の罰金がなく、「横領罪」の方が罰則的に重い事がわかります。
※横領罪にはさらに罪の重い「業務上横領罪」があります。有罪になった場合、横領罪の倍である10年以下の懲役が課せられます。
まとめ
今回の記事では、背任罪と横領罪の違いについて、詳しく解説させて頂きました。この記事を見ても少し難しいと感じた方は、横領罪は「他人のものを自分の所有物にすること」、背任罪は「他人のものを、自分か他の人のものにすること」と覚えておくといいでしょう。
投稿者プロフィール
- 10年以上にわたる探偵経験を持ち、調査分野のエキスパートとして認められている。これまでに手掛けた調査案件は年間200件以上にのぼり、その確かな調査力と洞察力で数多くの難解なケースを解決してきた実績を持つ。特に浮気調査や素行調査の分野で高い成功率を誇り、信頼と実績に基づいた調査を提供することを信条とし、クライアントからの高い満足度を誇る。
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