組織における背任行為とはどんなもの?詳しくご紹介

企業などの組織内での個人的犯罪には、「窃盗罪」「詐欺罪」「横領罪」「業務上横領罪」「背任罪」「有価証券偽造罪」等の刑法で定められているものと、「特別背任罪」「虚偽申告罪」「事実隠蔽罪」「インサイダー取引」等の商法や金融商品取引法で定められている、民法上のものに分けられます。
組織内での犯罪行為

背任罪とは
<刑法 第247条>
他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
背任罪は、個人や会社と法的な信任関係のある事務処理者が、その関係に背いて財産上の損害を加える犯罪です。
横領罪とは
<刑法252条>
- 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
- 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
横領罪は、「他人の物」を自分のものにする行為により成立します。
自分が預かっている(占有)他人の物を、売却・質入・贈与・費消・着服などによって処分する行為です。
背任罪と横領罪では、共通する部分もありますが、横領罪の対象は「自己の占有する他人の物」となります。
特別背任罪
<会社法 第960条 (取締役等の特別背任罪)>
次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
- 一 発起人
- 二 設立時取締役又は設立時監査役
- 三 取締役、会計参与、監査役又は執行役
- 四 民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者
- 五 第346条第2項、第351条第2項又は第401条第3項(第403条第3項及び第420条第3項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、代表取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者
- 六 支配人
- 七 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
- 八 検査役
取締役や執行役、監査役が(1)自己または第三者の利益を図る目的で(2)任務に背く行為をし(3)会社に財産上の損害を与えた場合に成立する。
法定刑は10年以下の懲役か1千万円以下の罰金またはその両方で、時効は7年。
特別背任罪(とくべつはいにんざい)とは、組織の幹部などの重要ポスト者が、自己若しくは第三者の利益又は損害目的で、その任務に背く行為で当該組織に財産上の損害を加えたときに成立します。
通常の背任行為よりも責任が重いとされ、背任罪とは差別化されています。
刑事事件での対応

もし、組織内部でこれらの犯罪の発生があった場合、その構成要件に該当するか否かの判断が難しく、専門的な検知での判断になります。
そして、適切な対処のため専門家への相談が必要になるでしょう。
ここでは、犯罪成立の可能性や対応方法について解説いたします。
犯罪成立要件
背任罪の構成要件は、以下の通りです。
【他人の依頼で事務処理をしている】
背任罪の成立には、他人のために事務処理をしていることが前提条件です。
会社などに雇用されている人が、業務上で事務を行っている場合などがあります。
【図利加害目的】
自分や他人の利益を図り、または委託者に損害を与える目的があることをいいます。
このような目的がない行為の場合では、背任罪の成立はありません。
【任務違背行為】
委託者から与えられた、任務に背く行為です。
たとえば、融資担当の従業員が、会社の規定では審査に通らない人に対して、個人的な理由で貸付をする「不正貸付」などのケースがあります。
【財産上の損害】
任務違背行為により、委託者に財産上の損害を発生させることです。
従業員が任務に背く行為であっても、会社に財産的な損害がないケースでは、背任罪の成立はありません。
刑事事件の流れ
ここでは、事件発生から判決までの流れを解説します。
①犯罪の発生
犯罪が発生した場合、事件の概要や犯人の特徴等の事情聴取、犯人に関する証拠品の押収、現場検証と事件に関する証拠品の押収を行います。
性犯罪やストーカー行為等の犯罪のケースでは、女性警察官・女性職員による事情聴取、立会い等の配慮もしています。
②逮捕
逮捕した被疑者は、留置の必要があれば、警察署の留置施設や拘置所に留置される。
警察は、逮捕・留置した被疑者を48時間以内に検察官へ送致します。
逮捕せず警察署等に出頭を求めて捜査することを「任意捜査」といい、任意捜査の場合は、事件捜査がまとまり次第検察官へ書類送致します。
③送致
「送致」とは、事件を検察庁に送ることです。
検察官は、被疑者を警察の留置施設や拘置所に引き続き拘束する「勾留」を裁判所に請求する(24時間以内)。
検察官が勾留する必要がないと判断すれば、釈放して任意捜査とする場合もあります。
裁判官は被疑者に逃走や証拠隠滅の恐れがあるかどうかを判断し、勾留の当否を決めます。
④勾留
被疑者を勾留する期間は、最長20日間。
この間、警察官や検察官は、被害者から詳しく事情聴取したり、実況見分を行います。
事情聴取の日時・場所は、できるだけ被害者の都合に合わせられます。
事情聴取の際、旅費を支給する場合もあります。
事件のため診断書が必要な場合は、その費用を警察で負担することもできます。
⑤起訴
被疑者を裁判にかけることを「起訴」、反対に裁判にかけないことを「不起訴」といい、起訴・不起訴の判断は、検察官が行います。
裁判官又は裁判所は、保証金を納付させて被告人を釈放する場合もあります。
⑥裁判
公判請求された事件について、裁判所は、公判廷で検察官、被告人、弁護人の主張を聴き、証拠を調べて審理し、被告人に対し刑罰を科すべきかどうかの判断をして判決を言い渡します。
公判請求された事件について、被害者は、裁判を傍聴できるが、証人として法廷に出頭を求められる場合もあります。
略式命令請求された事件について、裁判所は、書類のみによって審理し、被告人に対し罰金や科料を課すべきかどうかの判断をします。
また、判決に不服があるときは、上級裁判所に上訴(不服申立て)することができます。
まとめ
組織における背任行為では、様々なケースが想定されます。
そのような事件が発生した場合、組織としての迅速な対応が必要になってくるでしょう。
そのためにも、刑法上の予備知識を備えておくことは、組織の安全管理のために重要なことです。