横領罪ってどのくらいの金額から適応するの?

「他人のものを自分の所有物にしてしまう」ことで成立する「横領罪」ですが、そこに明確な金額は存在するのでしょうか?企業内で行われた「業務上横領罪」の場合は数十万から数千万円単位のお金が横領されることもありますが、金額についての明確な記載はありません。
そこで、今回は横領罪が適応される金額と、横領罪の実態について、詳しく解説していきたいと思います。
横領罪が適応される金額

落ちている財布を拾った、自販機に落ちているお金を拾ったなど、以前は誰かが所有していたものを、拾って自分のものにしてしまう行為は、「遺失物等横領罪」というものに該当します。その他にも「単純横領罪」、テレビやニュースなどでもよく聞く「業務上横領罪」という種類があります。
1円からでも横領罪になる?
非常に低い金額でも横領罪になりうるのが「遺失物等横領罪」です。この罪は刑法254条に定められているもので、遺失物とは、落とし物や忘れ物が該当します。簡単に言ってしまうと、「自販機の釣り銭入れから取ったお金や、道端で拾ったお金」を使った時点で、横領罪になります。金額は問題ではなく、その行為が罪になるということです。
ただし、理論上はそうなっていますが、実際は、少額で横領罪が適応されることはなく、遺失物を所有したとしても、「窃盗罪」が適応されるケースもあるため、ケースバイケースと言えるでしょう。
横領罪の金額に上限はある?
横領罪に金額的な上限はありません。数千万、数億、数兆円に至るまで、「行為に問題があれば」横領罪として刑事告訴されることになります。ただし、横領されていることに気づくまでに数兆円以上利用される例は少なく、稀なケースとも言えます。また、金額が大きければ大きいほど、資産家や大手企業がらみの事件となるため、世間的な注目度も高まります。
横領罪の金額によって刑期は変わる?
横領していた金額で刑期が変わる可能性は十分にあります。横領罪に関わらず、裁判では、行為の悪質性、被害状況(範囲、金額など)が考慮されるため、「より多くのお金を横領していた」となれば、悪質性と被害状況の点から心証は悪くなります。その結果、刑法で定められた範囲で、最も重い罪として裁かれることになるでしょう。
※横領罪は、内容によって刑が異なる
- 遺失物等横領罪・・・・1年以内の懲役または10万円以下の罰金もしく科料
- 単純横領罪・・・・5年以内の懲役
- 業務上横領罪・・・・10年以内の懲役
横領罪と窃盗罪の密接な関係性

横領罪に近い性質を持つ犯罪として、「窃盗罪」があります。窃盗罪は、刑法235条によって「他人の財物を窃取したもの者は、窃取の罪として、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定められており、横領行為によって「窃盗罪」に該当するケースもあります。
横領罪と窃盗罪の違い
横領罪は、「自分が所持、管理する他人のもの」であるのに対し、窃盗罪は「他人の財物を窃取する」と表現されています。横領罪は、人から借りたもの、管理を任されたものを自分のものにする行為ですが、窃盗罪は、他人の財物(金品、価値の物質)を奪う行為となります。例で説明するとこのようになります。
- 横領罪:人から借りた本、ゲームなどを自分のものにしてしまう行為
- 窃盗罪:許可もなく、人の本、ゲームを盗んだ行為(自宅、学校、職場などで勝手に取る行為)
こうした性質から、財布を拾って勝手に使う行為や、自販機に落ちているお金を利用する行為は、横領罪よりも窃盗罪になる確率の方が高いと言えます。※状況によって変わるため、あくまで確率と考えてください。
窃盗罪が適応される金額は?
窃盗罪に関しても、横領罪と同様に金額指定はありません。窃盗罪であっても、1万円以下の場合は示談(当人同士での解決)にする場合が多く、100万円であっても弁護士を通した話し合いで解決することもあります。窃盗罪も悪質性や犯人の特性によって、対応方法が変わるため、全ての犯人が懲役刑になるわけではありません。
※窃盗罪が適応されるには、被害者側から被害届を出しておく必要があり、被害届が出ていない場合、刑事責任を問うことはできません。
窃盗罪は罪が重い
横領罪の場合、業務上横領罪でなければ、最長5年以内の懲役刑であり、10年の懲役または50万円以下の罰金が定められている窃盗罪の方が、実質的に重い刑となります。また、横領罪の場合、初犯では執行猶予がつくことも多く、窃盗罪に比べて実刑判決の可能性も低いと言えるでしょう。
※業務上横領罪の場合は、被害額によって初犯であっても実刑となります。また、窃盗罪の場合も、被疑者の心情や状況によって執行猶予がつく可能性は十分にあります。
横領罪で逮捕される金額は

先ほど説明した通り、横領罪には金額が定められていないため、事実上1円でも逮捕される可能性はあります。ただし、実際にはその時の状況、被害者の対応、警察の対応によって大きく変わるため、一概に逮捕されるとも言い切れません。
逮捕の条件は被害届
横領罪、窃盗罪、どちらの場合にも言えることですが、刑事告訴するためには、被害者からの「被害届」が出ている必要があります。当人同士の解決などによって、被害届が出されていない場合、警察で逮捕起訴することは出来ません。逮捕の決め手は「被害届」ということを覚えておきましょう。
被害届が出ていれば金額は関係なし
被害者から被害届が出た時点で、横領罪は適応され、逮捕起訴することが可能です。これは極端な話、「1円でも被害届出ていれば逮捕できる」ことを意味しており、逆に1000万円でも、被害届が出ていなければ、逮捕することは出来ません。刑事告訴は被害者にかかっており、対応次第では示談交渉も可能になるということです。
※民事では最長20年という時効期間があるため、被害届を出さない場合でも、後から民事による賠償請求裁判を起こされる可能性もあります。
まとめ
今回の記事では、横領罪と金額の関係性を解説させて頂きました。結論を申し上げますと、横領罪に金額は関係なく、「行為」によって罪に問われることになります。横領されてしまった場合には、刑事責任を取らせるのか、示談交渉にするのか、金額によって考えた方がいいかもしれません。