不貞行為が発覚! 裁判に勝つために知っておくべきこととは?

不貞行為、いわゆる不倫が発覚したとき、思い浮かぶのは離婚と慰謝料請求ではないでしょうか。配偶者として当然の権利ではありますが、すんなりと要望に応じてくれるとは限りません。そういう場合の解決法として、民事裁判が考えられます。
不倫による裁判の流れ

弁護士に依頼しても交渉決裂した場合、選択としては諦めるか、裁判を起こすかの二択になります。まずは、裁判の流れがどういうものかを把握しましょう。
訴状と答弁書でスタート
民事裁判を起こすためには、慰謝料を請求する側(原告)が居住地の管轄裁判所に訴状を提出します。裁判所が要件を満たしていると判断したら、第1回口頭弁論期日を決めて請求された側(被告)に訴状、呼出状、答弁書を送付します。
被告は自分の言い分や反論を答弁書に記入し、一般的には第1回口頭弁論期日の1週間前までに提出。その後、指定された期日に裁判所へ行き、裁判開始となります。しかし、第1回期日は被告の都合を無視して決められたものなので答弁書を提出していれば欠席できるため、実質的な裁判は第2回期日からということがほとんどで、大体、1~2カ月ごとに行われます。
ちなみに、面倒だからと答弁書を送らず第1回口頭弁論期日も欠席した場合には、原告側の言い分を全面的に認めたと受け取られ、不利な判決が出ることもあるので注意が必要です。
原告側が注意すべきは訴えたい相手の特定や相手に求めることなどを書いた訴状とともに証拠を提出することと、慰謝料の請求が140万円未満なら簡易裁判所、140万円以上なら地方裁判所と、額によって提出先である裁判所が変わることです。
裁判になる不倫とは

不倫によるトラブルはいきなり裁判にせず、交渉を重ねて示談での解決をめざすことがほとんどです。裁判に発展するケース、裁判できないケースについて解説します。
裁判になる場合
不倫が発覚し裁判になるものは以下の2つが考えられます。
ひとつは不倫を認めない場合です。「食事をしただけ」、「勘違い」など言い逃れようとする場合には、話し合いでは決着がつきません。互いの主張と証拠を提出したうえで白黒つける必要があります。
もうひとつは慰謝料の額に合意しない場合です。不倫は認めたとしても、最も揉めるのは慰謝料の金額です。当然ですが、請求する側は高く、される側は安くしようとします。一般的にはこうした交渉は弁護士を通して行いますが、それでも折り合いがつかない場合には、適正な額を裁判所で判断してもらうことになります。
裁判にできない場合
不倫と言っても、実は慰謝料を請求できない場合もあります。当然、不倫による裁判の目的は慰謝料請求なので、裁判を起こすこと自体難しくなります。
それはすでに長期間別居しており婚姻関係が破綻していた、不貞行為による慰謝料請求の時効3年が経過している、無理やり性的関係を持っていたなどが考えられます。
また、出会い系サイトやマッチングアプリなどで明らかに独身だと虚偽、既婚であることを意図的に隠していた場合などには不倫相手には故意や過失がないと見なされ、訴えることは難しくなります。もちろん例外もあり得ますので、自己判断せず、弁護士に詳しい状況を相談することが先決です。
最大のポイントは証拠

交渉するにしろ、裁判を起こすにしろ重要となるのは証拠です。
特に裁判では、慰謝料を請求する原告側が不貞行為があったことを証明しなければいけません。
裁判で認められる証拠
裁判ではどんな証拠が必要になるのでしょうか。
ポイントは継続的に、不貞行為があったと見なせるもので、著しく反社会的な方法で集めたものではないことです。
具体的にはカメラで撮影されたホテルに出入りする写真、肉体関係があったとわかる録音、録画、クレジットカードや交通系ICカード履歴、メールやSNS、ブログの画面写真などが挙げられます。
改ざんしやすいデジタルカメラ撮影やスクリーンショットのデジタルデータは証拠として採用されにくいため、そうではないカメラで撮影したほうがいいでしょう。
証拠の集め方
どういう証拠が必要かわかったところで、問題はどうやって集めるかです。
クレジットカードや交通系ICカード履歴、SNSなどの証拠はがんばれば自分で集められるかもしれませんが、ホテルでの写真や録画、録音などを素人が集めるのは難題といえます。
他には探偵や興信所に依頼する方法があります。
実際、探偵や興信所の調査報告書は裁判の証拠として採用されています。費用はかかりますが、調査のプロなので相手にバレずに、違法性を疑われない方法で認められやすい証拠を集められるメリットは大きいです。
ただし、注意すべきこともあります。
信頼できる探偵かどうか見極めることと、確証を得てから依頼することです。何となくあやしいという心証だけでは調査費用がかさむだけです。
和解か判決か

裁判と聞くと、必ず決着をつける場という印象を持つ人が多いと思いますが、民事での慰謝料請求裁判は異なります。
和解案という選択
口頭弁論や弁論準備などでお互いの主張や反論が出尽くした段階になると、裁判所から和解による解決を打診されることが一般的です。
これまでの主張や立証されたことを元に裁判所が示した和解案を、原告、被告が合意できるものに調整して、合意に至れば「和解調書」を作成し解決となります。
「和解調書」というと、何だか効力が弱いように感じるかもしれませんが、判決と同様なので、よほどのことがない限り覆すことはできません。調書の最後に「強制執行できる」という執行文を記しておけば、相手が約束した義務を果たさなかったときに差し押さえることも可能です。
もちろん、和解には応じずに判決で白黒つけることもできます。
でも、それが必ずしも自分にとって最善の答えとなるかはわかりません。和解案は裁判官の心証を反映しているものであり、裁判を続けたところで、それ以上に有利な判決を得られるのかどうかが重要です。自分にとっての「勝ち」とは何かを改めて見つめ直した上での選択が求められます。
まとめ
交渉の末、裁判へと進む不倫裁判は刑事裁判とは異なり、必ずしも判決で白黒つける=勝つとは限りません。
何をもって勝ちとするのかは、婚姻の長さや関係性、不倫の内容、集めた証拠によって千差万別です。最終的にどうしたいのか、揺ずれないものは何かなど、裁判を起こす前に弁護士と話し合っておくことが大切です。