反社会的勢力と取引をしてしまった場合どうすればいいのか?

「反社会的勢力」と聞き、すぐにイメージをできる人は少ないのではないのでしょうか。普段関わりを持っている人の方が少ないと思います。どのような人たちなのかというと、いわゆる「暴力団」をイメージすると分かりやすいのかもしれません。暴力や恐喝により不当な利益を得ようとする集団です。もし取引先が反社会的勢力であった場合や、取引してしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。この記事では、取引のリスクや罰則について解説していきます。
そもそも、反社会的勢力と取引をしてはいけない
そもそも、反社会的勢力と取引することは法律でも許されていません。そのことについて解説していきます。
反社会的勢力との間では、経済合理性のある取引でも行ってはいけない
平成19年6月、政府は犯罪対策閣僚会議幹事会申し合わせとして「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表しました。その内容は以下の通りになっています。
①反社会的勢力を排除していくことが企業の社会的責任の観点から重要であること
②反社会的勢力に対して、資金提供を行わないことがコンプライアンスそのものであること
③企業は、反社会的勢力による不当要求には断固拒絶すること
④反社会的勢力とは一切の関係の遮断を行うこと
この指針により、反社会的勢力との関係を一切遮断することとされています。それは、反社会的勢力との取引で経済的合理性のある場合も例外ではありません。
暴力団非除条項
平成23年に全国で「暴力団非除条例」という条約が制定されるようになりました。内容は以下の通りになっています。
1.事業者は、事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は疑いがあると認められる場合には、契約の相手が暴力団関係者でないことを確認するように努めること(18条1項)
2.事業者が、契約を締結する場合にはいわゆる暴排条項を入れるように努めること(同条2項)
3.事業者が、暴力団関係者に対し利益供与を行うことは禁止されていること(24条)
4.3に違反した場合には、勧告・公表等の行政処分(29条)がなされ、さらに悪質のものについては罰則(33条)が科せられること
この条例の制定により、企業側の相手方が暴力団関係者でないことを確認するための努力、暴力団非除条例を導入する努力義務が課せられました。
反社会的勢力と取引した場合のリスク

暴力団非除条項によって反社会的勢力との取引を禁止されていますが、このような状況でもし反社会的勢力と取引をしてしまった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。解説していきたいと思います。
取引先からの取引拒絶
反社会的勢力と関係を持っている会社とは取引をしない、また関係を持っていることを把握した時点で取引を中断するという会社がほとんどとなっています。取引先の会社からすれば、そのような事実が判明した場合、あなたの会社自体が反社会的勢力に該当すると考えるからです。政府方針に則り、どんな重要な取引でさえ解消しなければいけません。
取引先の減少
反社会的勢力とあなたの会社が繋がっていると判明した時、他の会社との取引先が減少します。おそらく、ほとんどの企業があなたの会社と取引をしなくなるでしょう。レピュテーションリスクにも繋がり、世間からの評判が悪くなるなど、大きく安定している企業ならまだ耐えられる可能性はあるものの、会社の規模が小さく、十分な資産がない場合、その会社が倒産してしまうことも可能性としてはありえます。
金融機関からの一括請求及び融資拒否
銀行取引約定書には、企業が暴力団員等と関係を有している場合、期限の利益を喪失させるなどといった規定が定められている場合がほとんどです。金融機関が当該条項に該当すると判断した場合、期限の利益を喪失させたとして、あなたの会社が金融機関から借入をしている金額を全額請求される可能性があります。一括請求ではなかった場合でも、暴力団員等と関係を有していることが判明した際には融資の継続が不可能になってしまうでしょう。その結果、企業継続も困難になってしまいます。現に、反社会的勢力と関わりを持っていた企業が取引先から取引を打ち切られ、倒産になってしまったという事例も存在します。
反社会的勢力と関係を持たないために

それでは、反社会的勢力と取引してしまった場合や、関係を持ってしまった場合にはどのようにして解消すれば良いのでしょうか。解説していきたいと思います。
契約前
基本的に取引先と新規に契約することは自由です。相手側がどのような会社なのか把握することが大切でしょう。自分でインターネットなどのツールを利用し、相手側の情報を捜索しましょう。もし調査をして少しでも怪しいと思った場合は、取引を解消するなど、注意を払って関わりましょう。
暴力団非除条項の導入
新規に取引をする際には、暴力団排除条項(暴排条項)を導入した契約書を作成します。そうすれば、取引の相手方が暴力団関係者でないことを確認するのに役立ちますし、取引開始後に判明をした場合に、暴排条項に基づき、取引を解消することができます。努力義務として規定されているものでもあり、契約書に導入することに損はありませんので、積極的に入れられるといいでしょう。
契約後
もし気づかずに契約してしまった場合は、暴力団排除条項が契約書に導入されているか否かで対応が変わってきます。もしある場合は暴力団非除条項に基づき契約を解除することができますが、暴力団非除条項がない場合は、取引先と合意をして解約をするか、契約書のいわゆる包括条項に基づいて解除するかどうかを検討する必要があります。どのようにして契約を解除するかは法的なリスクもあるため、自己判断のみでなく弁護士や専門家に相談したほうがいいでしょう。
まとめ
この記事では、反社会的勢力と取引をした場合のリスクや罰則について解説してきました。法的にも反社会的勢力と繋がりを持つことは禁止させられています。「知らなかった」で済むようなことではないので、十分注意して取引を行ってください。