指紋鑑定で同一人物という結果が出た場合の弁護士の対処法は?
刑事もののドラマで「現場で検出された指紋と一致した」というシーンを目にしたことはありませんか?指紋が出てくれば、ドラマなどでもそうですがほぼその指紋の持ち主が犯人となるでしょう。ところで指紋鑑定について、弁護士はどのように考えるのでしょうか?もちろん弁護士によっても個人差があるかもしれませんが、一般的には以下のように考える傾向が見られます。
決定的な証拠にならない可能性
ドラマを見ると、指紋は犯人を特定するための決定的な証拠になるエピソードも少なくありません。実際の現場でも指紋が証拠として採用されることも珍しくありません。しかしフィクションの世界とは若干異なります。刑事事件の中では指紋は決定的な証拠にならないこともあり得ます。
なぜそうなるのか、まず事件にかかわる指紋すべてを現場からとれるかというとそうではありません。また捜査機関が鑑定を実施した場合、それが100%確実にいつでも正確という保証もないです。弁護士の中には指紋が見つかって被告人と一致したとしても、事件の時とは別のタイミングで付着しただけと主張する人もいます。
決定的な証拠ではない、ほかに証拠が見当たらない場合、弁護士はもちろん被告と打ち合わせをして方針を決めます。もし被告が無実を主張すれば、それに合わせます。証拠が出てこない以上疑わしきは被告人の利益になるのが基本のルールです。そのための弁護活動を行う弁護士は多いです。
指紋の検出は実は難しい
素手で何かをもった場合、ほぼ確実に指紋が検出されると思っている人も多いでしょう。しかし実際には、そう簡単に検出できない場合も少なくありません。指紋検出できるのは原則的に、手指から皮脂などの分泌物が出ていて、何かを触ったときに指紋通りに分泌物が付着した場合に限られます。
ところが場合によっては指から十分に分泌物が出てこない場合も考えられます。例えば冬場、乾燥しているときには手先もカラカラに乾燥するでしょう。そうすると分泌が十分でなく、指紋が付着していない可能性があります。また触った物質がどのような素材なのかによっても付着しているかどうか変わってきます。例えば革系のものや木材の場合、指紋が付きにくい特性を持っています。そのほかにもアイテムによっては手あかの汚れが付着しにくいように加工されているものもあります。このようなものをたとえ素手で持ったとしても、皮脂が検出できない可能性があります。このようにドラマではけっこうバンバン指紋が検出されるものが多いですが、現実の世界はそんなに甘くはないです。
指紋の提出を求められた場合は?
事件の関係者、もしくは容疑者に疑われた場合に警察の方から指紋を提出するように求められる場合もあるかもしれません。警察からそのように言われれば、提出はマストという感じがするでしょう。しかし例外を除き、原則任意で提出するように求められたのであれば、拒否することが可能です。このことは日本国憲法でも保証されていることです。指紋押印を強制されない権利は、私生活上の自由の一つとして保護されています。最高裁の判決でもその部分は支持されています。
なぜ提出を拒否できるのか、それは指紋が非常に重要な個人情報につながっていくからです。その性質上、万人不同性・終生不変性を持つからです。かなり難しい言葉で紹介しましたが、誰一人として全く同じ指紋を持っていない、そしてその形状は一生全く変わるものではないということです。もし採取した人が悪用した場合、皆さんのプライバシーが侵害される恐れも考えられる、重大な情報をはらんでいるのです。ですからたとえ警察でも、みだりに指紋を出すように強制できないわけです。もし任意で提出するように言われ、出したくないと思ったのであれば、拒否しても構いません。別に拒否したとしても、何らかのペナルティを受けることもないです。もし心配であれば、弁護士に相談してみるといいでしょう。「拒否できる」とほとんどの弁護士が認めてくれるはずです。
拒否できない場合でも
ただし警察に指紋を出すように言われた際、拒絶できないケースも出てきます。それは2つのケースのいずれかです。まずは身体検査令状が出ている状況です。警察の捜査には2種類あって、強制捜査と任意捜査があります。ドラマなどでもよく出てくる言葉なので、聞いたことがあるという人もいるでしょう。強制捜査は有無を言わさずできる捜査手法です。ただしこの場合、令状が必要になります。日本の場合、憲法で定められていることですが、令状主義です。逆に言えば、令状が下りていない段階では、たとえ公権力でも国民の権利や自由を侵害できないようになっています。
もし身体検査令状が出た場合、その人のボディチェックができます。赤の他人にみだりに体を触られたくないでしょう。ボディチェックをするということは身体の自由を侵害する行為です。個人の尊厳にかかわることになるので、より慎重に行われないといけません。指紋も身体検査の一種なので、強制的に提出させるためには令状がどうしても必要になるわけです。
また令状なしでも強制的に指紋を提出させることも可能です。それが身柄拘束されている被疑者を対象にしたものの場合です。逮捕や拘留されている容疑者については、指紋の採取や写真撮影をしてもかまわないとなっています。この場合、人権侵害の程度が少なく問題がないと判断されるからです。指を出すように刑事から言われた場合、逮捕されれば拒否できません。弁護士に相談しても指紋採取に応じるように言われるでしょう。ただし逮捕する場合でも現行犯逮捕以外は逮捕状が必要です。このように指紋を強制的に採取されるケースはかなり限られています。人権を尊重したうえで操作は勧められなければならないからです。
まとめ
指紋鑑定は警察に言われると、有無を言わさず従わないといけないというイメージを持っている人もいるでしょう。しかし上で見たように一部の例外を除き、拒絶できるような法体系になっています。もし自分だけで拒否する勇気がなければ、弁護士に相談するといいでしょう。弁護人が代理人となって、警察当局と交渉することになるでしょう。
投稿者プロフィール
- 10年以上にわたる探偵経験を持ち、調査分野のエキスパートとして認められている。これまでに手掛けた調査案件は年間200件以上にのぼり、その確かな調査力と洞察力で数多くの難解なケースを解決してきた実績を持つ。特に浮気調査や素行調査の分野で高い成功率を誇り、信頼と実績に基づいた調査を提供することを信条とし、クライアントからの高い満足度を誇る。
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