指紋鑑定の対象物は限定されるの?警察以外でも行われている指紋鑑定について

「指紋鑑定」と聞くと警察の捜査で行われているものを想像される方が多いかと思います。実は、警察以外でも指紋鑑定は行われています。
例えば、郵便で「中傷の手紙」が送られてきた、社内で不正が行われている可能性があり証拠集めたいという場合です。
「犯人の目星がついているが警察へ届けるのはちょっと……」と躊躇するような案件なら、指紋鑑定機関へ依頼することができます。
犯罪の現場に指紋が残っていれば、その場所へ行ったことがあるという判断になりますし、対象物に指紋が残っていたら、その対象物に触れたことがあるという判断になります。
警察には指紋やDNAなどの個人を特定するデータベースが存在していますので、そこへの照合作業が行われ鑑定結果が出ます。
警察の指紋鑑定は、刑事事件の捜査の一環として行われますが、警察のように指紋データを持たない指紋鑑定機関では、どんなものが指紋鑑定の対象になるのでしょうか。
実際に指紋鑑定の依頼のある事柄と指紋鑑定の可能な対象物についてご説明いたします。
どんな時に指紋鑑定の依頼があるのでしょうか

指紋鑑定では「指紋によって同一人物かを判断する」ことができます。
警察で行われる指紋鑑定は「窃盗事件」や「空き巣」などの刑事事件にかかわるものになります。
しかし、会社に「怪文書」が届くが社内の人間が行っている可能性があるなど、警察に訴える前に解決したい場合などは、探偵事務所や鑑定を行っている機関に指紋鑑定を依頼することがあります。
一体どんな理由で指紋鑑定の依頼が行われているのでしょうか。
郵便物の差出人を特定するための指紋鑑定依頼
先ほどの例にもあげましたが、「怪文書」や「中傷・いやがらせ」の手紙が送られてきた場合に、指紋による差出人の特定依頼があります。
被害者が差出人に心当たりがある場合は、心当たりのある人物の指紋のついたモノと送られてきた郵便物の指紋鑑定を行うものです。
しかし「身体や財物に危害を及ぼすような恐れがある」場合は警察へ届け出るほうが賢明でしょう。
社内の不正行為の証拠や、問題解決の判断材料としての指紋鑑定依頼
会社内で不正経理が発覚した場合、小切手や請求書・領収書または紙幣など、証拠となる資料の指紋鑑定を行うものです。
社内の人間に不正の疑いがある場合は、指紋鑑定の対象物が社内にありますので資料を準備しやすいと言えます。
証明書や届出書類の偽造に関する指紋鑑定依頼
婚姻届・離婚届などの文書が偽造され、それが提出されてしまい法的効力が発生しているのを取り消したい場合など、本人の同意のない書類が作成されている場合に依頼があります。
文書偽造は種類が多く、また本人がまったく知らないところで作成されまたは改ざんされてしまい不利益を被ることが予想されますので、裁判を前提とした係争資料として指紋鑑定を依頼されることもあります。
指紋はどうやって採取するのでしょうか?

指紋採取にはいろいろな方法がありますが、そもそも指紋とは何でできているのでしょうか
指紋の成分は油分です
指紋の主な成分は油分です。
空気中のダストが指先に吸い寄せられ、皮脂と混合したものが指紋です。
警察で指紋を採取されるのはどんな時でしょうか
警察ではデジタル機器を使って、指だけでなく掌などの掌紋を採取してデータベースへ登録しています。
また、警察による指紋採取は誰にでも行われているわけでなく、「逮捕されたとき」と「裁判官が発する身体検査令状がだされたとき」に限ります。
それ以外は拒否することもできます。
被疑者としてではなく、捜査の協力者として指紋採取をされることがありますが、こちらの指紋は事件の捜査が終わり不要になれば破棄されています。
スピード違反など交通違反をして切符を切られる場合に、指紋をとられる場合(印鑑を持っていない場合の指印)がありますが。
こちらは警察内でも取り扱いがまったく違います。
データベースに指紋が登録されることはありませんし、ほかの事件の捜査に利用されることもありません。
指紋鑑定機関で行われている指紋鑑定方法
テレビのニュースなどで見かける指紋採取の映像には、警察官が粉をぽんぽんとつけて指紋を採取していることが多いですね。
指紋鑑定機関で行われる指紋採取方法もほぼ同じです。
指紋採取にはいろいろな方法がありますが「アルミパウダー」が使われることが多いようです。
指紋鑑定に使われる「鑑識用アルミパウダー」には、指紋の成分を検出できるように配合されています。
これは指紋の成分である水分・油分・ダストを検出するために調合されています。
また、指紋鑑定機関での指紋鑑定は、警察のように膨大な指紋データから照合するのではなく、依頼人から指紋のついている可能性のある対象物(検体)の提出を受けて行われます。
そして指紋採取と指紋鑑定を行います。
指紋鑑定でわかることは
〇対象物に触ったことがあるか
〇対象物に残された指紋は同一人物のものか
という点になります。
指紋はあくまで「人を識別するデータ」の一つです。
指紋が検出できるものとできないものがあります。

人が触ったものに指紋はつきますが、その指紋を採取するには高度な技術を必要とします。
指紋を鑑定する対象物の素材によっては検出できないものもあります。
指紋を検出しやすい対象物の例
紙類・封筒など(コピー用紙等の上質紙が好ましい)
グラス・コップなどのガラス類
表面が滑らかな金属製品
表面が滑らかなプラスチック製品
となっています。
文書の偽造や怪文書なら、対象物は紙類となることが予想されます。
紙の材質にもよりますが、指紋を検出しやすいものに分類されています。
検出しにくい対象物 ・検出できない対象物の例
検出しにくいものは以下の対象物です
半紙や和紙等、表面がざらざらした紙類
接触した面積が小さいもの
革製品(カバン・名刺入れなど) ※エナメル質等の凹凸の少ないものは可能なこともあります
普段から多くの人が触っているもの
検出できないもの は以下の対象物です
衣服等の布製品
人体皮膚
革製品は汚れが付きにくくする加工が施されていることが多く、指紋の検出が難しくなります。
指紋鑑定は鑑定しやすい素材の対象物を選ぶとスムーズに行えます
警察以外で行われている指紋鑑定には、対象物の選定が重要になります。
指紋の検出が出来なければ鑑定不能となってしまいます。
しかし、現在は指紋採取の技術も進んでおり、水没した遺留品から指紋を検出することに成功しています。
今後、どんな検体からも指紋採取が可能になるかもしれません。