公示送達の調査のやり方
付郵便送達について調査のやり方をご説明した事がありますが、同じく裁判所さんに提出する聞込み調査が主体の調査として公示送達調査があります。
付郵便調査で証明したい事実は「その場所での居住事実の証明」ですが、公示送達調査では「その場所に居住していない事の証明」が目的となります。
しかし、何故住民票所在地に居住していないという事が起こるのか・・。
実際に裁判を行っている訳ですから、勿論、住民票などは確認されています。
にもかかわらず、その場所に送達しても「宛所がありません」と返送されてくるのです。
つまり、住民票はその住所にあるのに、その場所に住んでいないと言う事になります。
裁判というのは2~3日で終わるものではありません。数か月、数年かかって判決に至るケースもままあります。その為、裁判の間に居住地が変わったとしても何等不思議ではありませんが、住民票地にいないと言う事は住民票を移動させていない状況だと言う事になるのです。
意外と知られていませんが住民票の転入、転出届けを怠った場合や、しなかった場合、法律(住民基本台帳法第22条)で過料刑に処せられます。
※勿論、中には住民票を移す事ができない事情のある方もいます。DVやストーカー被害で避難している人がそうですが、この場合、裁判所は事態を把握しているので送達調査の必要性はありませんが。
しかし、対象者の居場所を知るすべは住民票しかありません。その場所で送達が完了しなければ、裁判が完結しない。それでは困るので公示送達調査を行います。
まず、送達場所に対象者がいない事を証明する必要があります。また、公示送達の場合は住民票所在地にいない事に加え、送達できる場所がない事も証明する必要があります。
例えば、勤務先。住まいは断定できなくてもコンタクトがとれる勤務先があれば、そこに送達を行える訳なので、その様な場所もない事もあわせて聞き込む必要があります。
調査手法は付郵便送達と同じく、探偵・興信所と名乗っての聞込みです。
まずは、
・現在、対象宅は空き室になっているのか?
・対象宅は何時引っ越したのか?
・対象さんはどこにお勤めだったか知らないか?
この質問を近隣者に片っ端から聞きまわります。
その様なやり方で聞込みを続けていると、“探偵が聞込みをしている”と言うのが物珍しいのか、普段はあり得ない事ですが、近隣者の方々がゾロゾロと集まって、いろんなお話をしてくれたり、以前住んでいた方に連絡をとってくれたりと協力してくれるケースが多くあります。
昭和の井戸端会議さながらに近隣者が近隣者に話を繋げてくれ、更に携帯電話という通信手段を加えて、一大調査ネットワークが構成されて行き、あらゆる情報が入手でき、対象者の方の現在の居場所まで特定できる事もあります。
あるケースでは住民票も移動していない。数か月前から部屋の明かりもついていないという状況からの調査依頼でした。当初は近隣さんも“知らない”、“誰が住んでいたのかも知らない”と非協力的でしたが、探偵が汗水たらして聞込みを続けているのに同情してくれたのか、しばらくすると、ある近隣者さんが「この近所に以前住んでいた町の纏め役みたいな人に電話して聞いたら、そこのお宅には○○さんが一人で暮らしてたけど3か月前に体調を崩して入院したのをきっかけにホームにはいったそうです。今は関東在住の息子さんが時おり、家屋のチェックに来るくらいらしいので、その息子さんに連絡してみたら。はい、これ電話番号」なんていう事もありました。
公示送達の調査を行う場合、最もわかりやすいのは空き家、空き室状態になっている状態です。カーテンもかけてなく、室内も丸見えで家具家電などの家財道具もない、電気メーターを見ても待機電力も作動していない。こうなれば完全な空き室です。目視した状況に加え、近隣者に“いつ頃から空き室か?”などを聞きまわり、調査報告書としてまとめます。
逆に困ってしまうのは居住者がいる様子が確認された場合です。
この場合、その居住者か対象者か否かを解明する必要があるのですが、マンション住まいなどの場合だと、お隣さんの名前も知らないというケースが多く、“住んでいるのが○○さんではない”事を証明するのが困難となります。
そうなると、直接訪問となるのですが、インターホンを押しても出てきてくれないケースもあり、非常に困難を極める事もあります。
あまり何度もインターホンを押すわけにもいかないので、粘り強く、訪問回数を重ね、何とか部屋主さんとコンタクトをとり“○○さんではない”言質を頂戴します。
こんなケースがありました。
該当宅のインターホンを鳴らし、居住者さんが応答してくれたので、探偵である事を名乗りお話しを伺おうとしたところ、“探偵が訪問してくる”という非日常に警戒をされたのだと思うのですが「私が○○さんかどうかはお答えできない」と言われた事があります。
禅問答のようですが、これでは証明にならないので、名刺やHP、探偵手帳などを示して、粘り強くお話しを進めると、次第にご信頼頂ける様になり「営業か何かかと思ったので、失礼しました。(こちらこそ申し訳ございません)私は△△と申します。○○さんではありません。私は半年前にここに越してきたのですが、そう言えば、○○さん宛ての郵便物が来ていました。困るので郵便局に言って止めてもらいましたが。勿論、○○さんとは知り合いでも何でもありません」との回答が得られたことで送達調査が完結した。
近年では単身者向けのワンルームやウィークリーマンションなどが増ている為、この様な確認作業も容易ではなくなってきたのも現実なのです。
“いない事を証明する”と言うのは、簡単な様で難しいという側面はありますが、原告、被告、それぞれの権利を守る為には、明確な結果を取得しなければなりません。
引いてはそれぞれの権利を守る事に繋がると思い、調査員は正確で確実な情報収集に努めているのです。
投稿者プロフィール
- 10年以上にわたる探偵経験を持ち、調査分野のエキスパートとして認められている。これまでに手掛けた調査案件は年間200件以上にのぼり、その確かな調査力と洞察力で数多くの難解なケースを解決してきた実績を持つ。特に浮気調査や素行調査の分野で高い成功率を誇り、信頼と実績に基づいた調査を提供することを信条とし、クライアントからの高い満足度を誇る。
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